インタビュー

株式会社エムエム・ブックス代表取締役 服部 福太郎さん/マーマーマガジン編集長 服部 みれいさん

出版社ごと東京から美濃に移転 新しい楽しい暮らし模索し、発信

服部みれい 私たちが発行しているmurmur magazine(マーマーマガジン)は、元々、エシカルファッション、オーガニックライフなどをテーマにした、アパレル企業の季刊誌でした。東日本大震災をきっかけに発行形態を見直し、編集長を務めていた私が版元となり、エムエム・ブックスがスタートしました。編集だけでなく、慣れない社長の仕事も全国の書店への販売もやらなければならず、半年後には、精神的にも体力的にも沈没寸前になっていました。休刊も考えていたころに現れた助っ人が、福太郎さんでした。

天然繊維の衣服などを扱うエムエム・ブックス みの

本を作る人と売る人のコンビ、半年後に結婚

服部福太郎  僕は、大手のゲーム会社で営業をしていましたが、東日本大震災が起きて、「明日死ぬとしたら、この仕事をしていたら後悔する」と思い、会社を辞めました。「心から勧めたいもので商売しよう」と思っていましたが、何を勧めていいかわからず、自分で絵を描いて気に入ったら買ってもらうなど、模索の日々でした。そのころ、みれいさんの本に出会い、2012年9月からアルバイトとしてエムエム・ブックスで働き始めました。

服部みれい  福太郎さんが営業を担ってくれたので、私が本を作り、福太郎さんが売るというコンビが期せずしてでき、マーマーマガジンを休刊せずにすんだのです。神様がギフトをくださったとしか思えないようなタイミングでした。同じような価値観で、ご縁があったんでしょうね。出会って二ヵ月後には婚約し、半年後に結婚しました。

服部福太郎  みれいさんが作る本や雑誌は、冷えとり健康法や、絹、オーガニックコットンの衣類など自分自身でやってみたり、使ってみたりしてよかったことが、一貫してベースになっており、そこに魅力を感じました。働いてみて、偽りがなかったんです。

服部みれい  自分を大切にする生き方が、地球環境を大切にすることにもなるというのが、私たちが伝えたいことです。例えば、農薬を使わないオーガニックコットンのように。

表参道のワクワクした気分も持ち帰りながら

服部みれい  独立当時、会社は、東京の表参道にありましたが、マーマーマガジンの特集で、自然農に取り組む全国の人たちを取材し、山手線の内側にある都会のど真ん中で、こういう記事を書いているのはどうなんだろうと思うようになりました。後に、都市化すればするほど、都市の人たちが危うくなる、という中島正さんの「都市を滅ぼせ」という本を読んで衝撃を受け、農業体験をしたこともある福太郎さんにも勧められ、2015年春、私の故郷の美濃市に会社ごと移りました。

 もちろん、都市でオーガニックレストランや自然派化粧品が広がるのはすばらしいことですし、そのために一生懸命やってきましたが、今度は、都会的な価値観や身につけたもの、表参道にいた時のワクワクした気分を持ち帰りながら、若い人たちが「田舎に帰るのは楽しそう」と思えるような、新しい暮らし方を探していこうと思ったんです。

農作業中にサプライズでスタッフの誕生日祝い

楽しいことをしている人たちのつながりを

服部福太郎  編集部で畑を持ち、僕は今年から田んぼを始めました。土に触れ、できたものを一緒に食べる暮らしになって、取材の仕方や話す内容も、より本質的になっていると感じています。

服部みれい  都会より自由度が高まり、ワクワクすることや夢がいっぱいあふれています。人々の意識は変わってきていますが、お金を中心にした経済優先の社会システムが変わらないために、うつや過労死、貧困、自殺などの問題が起こっていると思います。田舎は物々交換など貨幣以外の経済もすごく回っていて、お金に偏り過ぎない暮らしのヒントが隠されているように感じます。そんなリラックスできる暮らし方をベースに、自分に正直に生きる生き方を提案していけたらと思っています。

服部福太郎  日本全国で、自然に関わる生き方、自分を活かすこれまでと違う生き方を始めている人たちが、ものすごく増えています。マーマーマガジンのネットワークを活かして、各地で楽しいことをしている人たちがつながっていけるようなイベントも考えています。

キーワード【地方への移住】

農業など生きがいを感じる仕事や自然の中での子育てが魅力で急増

360°VR動画で岐阜の街並みを疑似体験=東京での移住セミナーで

 ここ数年、地方に移住する若者が急増している。今年、設立15周年を迎えたふるさと回帰支援センターは、団塊の世代の農山村への移住促進を目指していたが、今では20代から40代までの相談が約7割を占め、相談件数も激増している。同センターの高橋公理事長は「人口急減で自治体も地域住民も意識が変わり、支援制度も整備され、移住先で成功する人が増えています」という。非正規雇用、満員電車の通勤、保育園不足、高い住居費など何かとたいへんな都会に比べ、農業をはじめとする生きがいを感じる仕事をみつけられ、自然の中でのびのびと子育てができる田舎暮らしは、若者にとって魅力的だ。移住人気の高い岐阜県をはじめ中部の自治体も移住促進に力を入れている。

中日新聞朝刊 平成29年7月28日付掲載

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