インタビュー

東京・世田谷区のみんな電力

 誰でもが電気を創り、売り買いできる時代へ―参加型のソーシャル・エネルギー・カンパニー「みんな電力」(大石英司代表取締役、本社・東京都世田谷区)は、4月からの電力小売り全面自由化を機に、スマホなどで、安心、安全な「顔の見える電力」を消費者が選べる仕組みをスタートさせる。

 大石さんは、ある時、東京都内の地下鉄で、キーホルダー型のソーラーライトをかばんにぶらさげた女性を見て、ひらめいた。「電気って、誰でも簡単に創れるんだ!」。そして、携帯の電池が切れそうだった大石さんは「このお姉さんと友だちになって、電気を200円で買いたい」と思った。

 それがきっかけとなって、おじいちゃんやおばあちゃん、ギャルもちびっ子も、そして地域でも、みんなが電気を創り、財を得られる仕組みをつくりたいという思いが膨らみ、福島第一原発事故後の2011年5月、勤めていた会社を辞めて、参加型の電力会社「みんな電力」をつくった。

手軽に発電できるsolamaki

地産地消で太陽光発電

 誰でも電気を創れるようにと、てのひらに乗るソーラー充電器「空野めぐみ」や、くるくると巻いて持ち運べる「solamaki」、すだれのようにマンションのベランダにつるせるベランダソーラーなどを次々と開発。特定規模電気事業者(新電力、PPS)として、太陽光発電やバイオマス発電などの発電所づくり、電力の小売りや買い取りなどにも業務を広げてきた。

 今年2月からは、「顔の見える電力会社」として、区内の区営住宅屋上の太陽光パネルで発電した電気を、同社が本社を置く世田谷ものづくり学校に供給する、電力の地産地消も始めた。

スマホで発電所を紹介

発電所の情報など紹介

 4月からは、電力小売りの全面自由化に合わせて、「顔の見える電力会社」として、一般家庭向け販売も始める。野菜の生産地情報を明確にするように、「ENECT」というスマホなどのサイトで、仕入れ先の発電所の情報、つくっている人の思い、発電所づくりのストーリーなどを紹介し、誰でも自由に電力を選べるようにするサービスだ。

 新電力に、電源構成の表示義務が課されなかったことで、地球温暖化につながる二酸化炭素を多く排出する石炭火力発電所の電力が安さだけで選択されることも想定されるが、みんな電力の取り組みは、そんな状況に風穴を開ける可能性を秘めている。

親しまれる電力会社を目指して、市民の声を集める場も

思いも一緒に伝えたい

 全国各地に広がった再生可能エネルギーの市民発電からは、「自分たちの電力はみんな電力に売りたい」という声が多数寄せられているという。既存の電力会社に売ると、どこに行ったか分からず、使う人に思いも伝わらない。みんな電力に切り替えれば、思いも一緒に伝えられるというわけだ。

 大石さんは「発電事業者さんの思いが伝われば、使う人の電気への思いも変わり、節電意識も向上するでしょう。自分もやってみようか、と発電側に回れば、再生可能エネルギーの供給も増えていきます。顔を見せるという行為は、いろんな付加価値を生むと思います」と、思いが響き合う未来に期待を寄せる。

 電気の販売は、電源を確保している関東や関西から始め、要望があれば、中部に広げることも検討する。

安さばかり追わず未来を考えた選択を

大石 英司(みんな電力代表取締役)

新開発のベランダソーラーを紹介する大石さん

 今年1月に理想の電力会社を考えるワークショップを開催しました。夏なら太陽光、春は雪解けを感じられる小水力発電というように、電気の季節性を表現したらとか、歩くと発電できる床にしたり、太陽光パネルで覆ったりして、家全体で発電できるモデルハウスをつくったらとか、おもしろいアイディアがいろいろ出ました。利用者と電力事業者の垣根が低くなるのは、電力自由化の特徴ですね。

 これからも、スーパーや商店街、エコイベント、ロックフェスなどで、自転車発電の電気を買い取ったりするイベントを開催していきます。電気を売った人がみんな電力のサイトを見て、電気を選べば、再生可能エネルギーの需要も拡大します。

 福島第一原発事故で、原発の電力で暮らしていたことをみんなが意識しました。こういう強烈な経験をした日本では、よい選択肢があればそちらを選ぶという人はけっこういると思います。電気料金の安さばかり追い求めず、一人ひとりが未来を考えて選択すれば、資源の奪い合いによる紛争の回避や、地球温暖化を和らげる低炭素社会づくりに貢献でき、結果的には、コストも安くなるでしょう。

 海外では、アップル、グーグル、フェイスブックなど有力企業が、持続可能な社会をつくる企業として、電力調達の指針を持っています。再生可能エネルギーを使うと宣言しているのです。日本の企業は、企業の社会的責任(CSR)と言っていますが、その取組みはまだまだです。企業の変化が、消費者のライフスタイルに影響を与える面もあると思いますから、ぜひ意識的に取り組んでほしいですね。

中日新聞朝刊 平成28年3月18日付掲載

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