インタビュー

地球と人の未来をよくするために それぞれの道を歩み続ける人たち

 Viva地球は、名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれる前年の2009年1月以来、7年にわたって、様々な環境問題に向き合う人たちを紹介してきました。インタビューはひとまず終了し、来年からは地域の取り組みを中心にご紹介します。そこで、これまで登場した人たちの印象に残る発言をまとめてみました。(肩書は掲載当時のものです)。

動物たち

宮崎 学さん(自然界の報道写真家)
 生きものがどのように暮らしているかということは全て子どものころから遊びを通じて知っています。そのころの原体験があるから、仕事のネタに尽きることはありません。
小原 玲さん(動物写真家)
 10年前までは流氷の上にヘリコプターで着陸、テントも張れたのですが、60センチあった厚さが半分になり今は不可能です。今年、カナダでは出産時期の3月に流氷がなくなっていました。産む場所がなく死産したアザラシも相当いたことでしょう。
※小原さんの呼びかけで生まれた、地球環境を伝える写真家集団「EYEWITNESS 目撃者たち」による「未来への伝言」シリーズは、来年以降も継続します。

人と自然

C.W.ニコルさん(作家・ナチュラリスト)
 大人が手を出すだけでさっと逃げちゃうような虐待を受けていた子どもでも、森で遊んでいるうちに自分から寄って来たりするようになる。本当にがらっと変わるのです。
丹羽 健司さん(矢作川水系森林ボランティア協議会代表)
 大規模機械化・効率化の林業では、一瞬森はきれいになるかもしれないけど、山村もきれいに消えてしまうのではないかと心配です。それよりも人のざわめきがいっぱい聞こえる森と村づくりをしたいのです。
呉地 正行さん(たんぼの生物多様性向上10年プロジェクト)
 冬も田んぼに水を張るふゆみずたんぼでは、雑草が生えにくくなり、農薬を使わなくてすむようになったことで、ドジョウ、フナ、ナマズ、タニシなども獲れるようになりました。田んぼでごはんもおかずも獲れるんです。
辻 淳夫さん(NPO法人藤前干潟を守る会理事長)
 日本の人口の約半分は東京湾、伊勢湾、大阪湾に集中しています。そこが豊かだったから人が集まったのであり、流域は人にとっての生存基盤なのです。
森 一知さん(22世紀奈佐の浜プロジェクト事務局長)
 伊勢湾の漂着ごみの大半は流木です。間伐をしたまま放置された丸太が流れ着いたりするのです。海そのものではなく、山林を手入れすることが伊勢湾のゴミを少なくすることにもつながります。

農業

藤田 和芳さん(大地を守る会・会長)
 バリの芸術は世界的なレベルだと思いますが、ダンスの踊り子たちになぜこんな素晴らしいのかと話を聞くと「私たちは農民だからです」と言うんです。田んぼに行って虫や命が成長するのに出くわしたり、育ったものを収穫したり、そういうものに触れた時の感動を表現する。それは農民だからこそ出来ることだと言うんです。
関根 佳恵さん(愛知学院大学経済学部専任講師)
 国際的な流れは、輸出志向型の特定産物に特化した農業や、国際市場に大きく左右される農業に、否定的になってきています。新自由主義的な農業政策では遅れた形態と思われてきた家族経営や小規模経営が、実は持続可能な農業の一番すぐれたモデルだったと言われるようになってきたのです。

広がる連携

萩原 喜之さん(地域の未来・志援センター理事)
 地域の未来・志援センターは、この10年、環境問題のとらえ方を、CO2やごみなどの狭い意味から、人権、平和、格差などまで含んだ広い意味に広げ、NPOだけでなく、企業や行政まで含めた中間支援組織として活動してきました。
熊沢 豊さん(なごや環境大学・事務局次長)
 行政だけ、また企業だけ、ましてや市民一人だけではとてもできないことを、市民(団体)、企業、大学(学校)、行政のネットワーク力で成し遂げていく。この連携が、なごやが本来持っていた地域力を呼び覚ましました。
榎田 勝利さん(NPO法人愛・地球博ボランティアセンター理事長)
 私は、「市民のボランティア参加が社会を変える。緩やかなボランティア革命を起こそう」と呼びかけています。

国際協力

野口 健さん(アルピニスト)
 エベレストの清掃活動で、3人のシェルパを失いました。活動停止も考えましたがメンバーからは「続けたい」と。清掃を終えた彼らは村へ帰ると、自ら村にゴミ捨て場を作り、村の学校でエベレストの清掃活動の様子を伝え始めました。
大橋 正明さん(国際協力NGOセンター理事長)
 私たちが援助をしたり生産や消費を切り詰めていったりするのは、家計をやりくりして所得税を払うようなものだと思うんです。もし世界政府があったら、所得の高い国から所得税を取るのは当たり前ですよね。

COP10

アハメド・ジョグラフさん(生物多様性条約事務局長)
 里山や里海という言葉は日本独特のものですが、こうした考え方はほかの国にもあります。里山をコンセプトとして示すことで、世界の多くの国々の人たちに、彼らが持っていた伝統や、自然と共生していく考え方を思い出してほしいのです。
柏木 実さん(ラムサール・ネットワーク日本共同代表)
 生物多様性への関心を一部に留めずメインストリーム化(主流化)し、COP10で決まった愛知ターゲットの目標を達成するために、計画をきちんと立て、進み具合をチェックしていくことが大切で、生物多様性の10年はそのための枠組みとなります。

ESDの10年

白井 貴子さん(ミュージシャン/ESDオフィシャルサポーター)
 私が今、一番思っているのは、これからの子どもたちに、未来に残すべきいい歌を伝えることです。ESDのオフィシャルサポーターとして作った「僕らは大きな世界の一粒の命」は、未来の子どもたちに向けた私のお手紙であり、今生きている大人には喝を入れる一曲です。
斎藤 珠里さん(ユネスコ教育局ESD課広報促進スペシャリスト)
 今回の会議で発表されたESD(持続可能な開発のための教育)の10年を振り返る報告書では、回答した70ヵ国のうちの三分の二が国家戦略または国家政策の中にESDを位置付けていることが紹介されました。

愛・地球博から10年

中村 利雄さん(2005年日本国際博覧会協会元事務総長)
 愛・地球博では、市民参加が重要な要素でした。スキルがどうとか、きれいにつくるとかではなくて、見た人に何かを感じてもらい、自分も参加してみようかというモチベーションを与えるようなことをやってもらいたかったんです。
福井 昌平さん(元愛・地球博チーフプロデューサー)
 持続可能な社会をつくるための様々な解決策を持ち寄る知恵や技の実験の場、地域、生物・生命、文化の多様性を擁護する場、地球市民の感性を磨き地球市民としての連帯を生み出す場にしようという3つの考え方を、僕らは「愛・地球博」という名前に集約させたのです。
森山 良子さん(歌手/愛・地球博開幕式で開会式公式ソング「マザーアース」を熱唱)
 愛・地球博は、「自然の叡智」がテーマでしたが、人間の叡智をもっと掘り起こして、この地球に住むみんなが、もっと環境や人にやさしく接していこうという、人類の理想が掲げられた場所だったと思います。

エネルギー

浅岡 美恵さん(気候ネットワーク代表)
 ドイツでは今や、再生可能エネルギーは安いエネルギーになりつつあります。再生可能エネルギーの拡大を抑制しようとしている日本と、ドイツとの差は開くばかりです。
赤池 学さん(ユニバーサルデザイン総合研究所代表取締役所長)
 東日本大震災で、大容量の電力ネットワークも不確かで危ういものであることが分かってきました。エネルギーには、電気だけでなくガスや太陽熱、下水の廃熱など様々な熱もあります。熱が主で電気が従の「熱主電従社会」がスマート社会の選択肢かもしれません。

ライフスタイル

原田 さとみさん(エシカル・ペネロープ代表)
 エシカルは「倫理的な」というのが直訳ですが、私は「思いやり」とお伝えしています。パリの展示会「エシカル・ファッションショー」に出会ったのが、私にとってのエシカルのスタートでした。プロがプロとして環境に配慮した素材で、良心ある行動で、思いやりのビジネスをおこなうことでエシカルが広がるでしょう。
水野 浩行さん(MODECO代表)
 MODECOの製品は、環境負荷が上がったり質が下がったりするリサイクルではなく、廃材をまったく違う付加価値を持つバッグなどに変えるという意味で、アップサイクルという言い方をしています。

中日新聞朝刊 平成27年12月18日付掲載

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