インタビュー

株式会社オルタナ代表取締役・「オルタナ」編集長 森 摂さん

社会的な活動で企業の価値を高め 未来の顧客を創造する

 大学卒業後、日本経済新聞社に入って約20年間、主に企業取材をしてきました。いわば資本主義経済のど真ん中で仕事をしていたわけです。ところが米国ロサンゼルスに駐在していた1999年、米パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードにインタビューしたことが独立の契機になりました。

会社は誰のものでもなく、地球のもの

 日本でも経営者への取材のたびに「会社はだれのものか」という質問をしていました。単に「株主のもの」とは思えなかったからです。同じ質問をしたところ、イヴォンは、環境NGO「フレンズ・オブ・ジ・アース」(FoE)の創始者デイビッド・ブラウアーの「死んだ地球からビジネスは生まれない」という言葉を引用して、「会社は誰のものでもない。地球のものだ」と答えました。かっこいい答えですが、咀しゃくするのに時間がかかりました。そして、新自由主義的な政策が貧富の格差を加速させている中、様々な矛盾や限界を抱える20世紀型の資本主義ではない、21世紀型の理想的な資本主義を目指す雑誌を創りたいと思ったのです。

雑誌『オルタナ』と新刊の『未来に選ばれる会社』

社会的責任ではなく企業の社会的対応力

 『未来に選ばれる会社』では、何のためのCSRかという8年前の創刊以来の命題への答えを書いたつもりです。

 社会的な活動をすると、企業価値が高まり、未来の顧客を創造できます。余剰利益の社会への還元ではなく、社会的な課題への取り組みを本業に組み込んで未来の顧客を創造する流れが大切です。これが、企業ブランドへの共感や信頼を高めるブランディングの中に、社会的な価値、「社会軸」という新しい切り口を入れる、CSRを起点にしたソーシャルブランディングです。

 CSRは「企業の社会的責任」と訳されてきました。しかし、レスポンサビリティ(責任)という言葉は、レスポンス(反応する、対応する)とアビリティ(能力)という言葉に分けられるのです。すると単なる責任ではなく、「企業の社会対応力」と訳す方が良いことが見えてきます。企業が社会的課題や社会ニーズにどう対応していくかが大切ということなのです。

 企業のコンプライアンスという言葉も、「法令遵守」と訳されていますが、法令だけ守っていればいいのではなく、社会のニーズを対話で聞き出し、対応していくのが本来のコンプライアンスで、それがCSRの真髄です。

社会的責任ではなく企業の社会的対応力

 2010年に公表された組織の社会的責任についての国際規格ISO26000には、7つの中核主題があります。環境はその一つで、人権、コミュニティの問題などと密接に絡み合っていることが、明確に示されました。企業の環境対応も、これからは網羅的に、あらゆるニーズに対応していかなければならず、環境とCSRの部署を統合することが重要です。

 ソーシャルブランディングの観点から、当然、自社の取り組みを発信することも必要です。また、CSRで株価を上げるという手法も注目されています。環境の「E」、社会の「S」、企業統治(ガバナンス)の「G」を合わせたESGという企業の社会的な価値に注目した投資が欧米では増えており、日本でもそういう流れが来るのは間違いないと思います。

グリーン経営者フォーラムの熊本サミット参加者

グリーンな価値観の経営者フォーラムも

 『未来に選ばれる会社』では、違法伐採された木材を使わない家具の製造・販売会社、荒れた放置竹林の問題解決のために、農家が持ってきた地域の竹を買い取って製紙原料にしている製紙会社など、環境問題への取り組みもいろいろ紹介しています。これらの取り組みを通じて、結局は彼らも自社の価値を高めて、未来の顧客を創造するというミッションを果たしていると言えます。

 こうしたグリーンな価値観を共有する経営者のネットワーク、グリーン経営者フォーラムを2010年につくりました。現在会員は100社ですが、将来的には1000社を目指し、グリーンな経団連的な存在にして、経営者や企業の価値観を変えていきたいと思っています。

中日新聞朝刊 平成27年10月23日付掲載

一覧に戻る

2016 愛知環境賞

第75回 中日農業賞

地球のいのち、つないでいこう

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ