インタビュー

愛・地球博開幕10周年記念 LOVEARTH特別号2005年日本国際博覧会協会元事務総長・日本商工会議所・東京商工会議所専務理事中村 利雄さん

環境対策を研ぎ澄ました愛・地球博 事業の成功が成果の継承につながる

 愛知万博(愛・地球博)の開催が1995年に閣議決定された時、私は通産省(現経産省)の会計課長をしていました。今どき、万博にこれだけ金をかける意味があるのかという議論は、通産省内でもだいぶありました。ただ、名古屋オリンピックの誘致失敗がトラウマになっていた中で、国際的な大イベントをやってもらうことは非常に望ましいと、個人的には思っていました。

 なんとか閣議決定までこぎつけ、地元出身者としての恩返しは終わったと思っていましたが、それから何年も経った2002年に「手伝ってくれないか」という話が突然あり、2003年から博覧会協会の事務総長になりました。

環境対策で、メーン会場を青少年公園に

 その間に、オオタカなどが見つかった海上の森の会場を縮小し、愛知青少年公園をメーン会場にしたり、道路建設を中止したり、といった変更がありました。私自身は、こうした変更に直接タッチしていませんが、環境問題でいろいろあったことで、環境問題の対策として本当にやるべきことが、結果として非常に研ぎ澄まされてきて、いい万博になったと思います。

 私も、環境保護団体や地元の方たちとのやり取りの中で、環境影響評価を徹底的にやったり、いろんな仕組みを考えたりしました。例えば、人家の上を通るゴンドラでは、家の中が見えないように、人家が近づくと窓が暗くなり、外が見えなくなるようにしました。建設する時には、いろいろなご意見が出ましたが、そこまでやって皆さんに納得してもらったので、撤去する時には一切意見は出ませんでした。

 青少年公園は、終了後に一部を除いて施設を撤去して元に戻すという約束だったので、基本的にはそのとおりにしました。ただ、万博の成功で県民の意識も変わってきていたので、ソフト面だけでなく、ハード面としてのレガシー(遺産)として、少し施設を残すこととしましたが、もう少し残しておけばよかったという思いはあります。

楽しさや驚きなどのエンタテイメントを

 私は、最初に博覧会協会に来た時に、海外の国内博を見学に行きました。文字がいっぱいの展示で、やはり、万博は、楽しさや、こんなことができるのかという驚きなど、エンタテイメントの要素がなければ成功しないと思いましたね。そういう意味では、ロボットの展示が注目を集めたトヨタ館をはじめ、万博のために開発した最先端技術による展示がいろいろとあって、発想や技術の面で、万博にとっても、その後の社会にとってもモデルになるような展示が数多くあったと思います。

 交通手段もインターネットも発達しているから万博はもう要らないという議論は、当時からありました。でも、2000年のハノーバー万博以来、世界の課題の解決策を示すために万博は開催されてきており、人と人との交流や、現実にその場に行ってリアルなものを目にすることの意義は今でもあると思っています。

 愛・地球博では自然の叡智がテーマでしたが、今年のミラノ万博は食がテーマになっています。食料資源の確保や食の安全にどう対応するかなど、いろいろな切り口があり、いろんな国や企業が一堂に会して同じテーマを追求し、それぞれの取り組みを比較できるのは、万博の良さだと思います。ただ、課題解決のためには、人間の行動や考え方を変えなければならないかもしれないですから、共感を覚えてもらえる展示にすることは大切だと思います。

海上の森の瀬戸会場で実施された市民参加プログラム

見た人が参加したいと思うような市民参加に

 愛・地球博では、市民参加が重要な要素でした。正直なところ、最初は、市民参加が学芸会になっては困ると思っていました。「お金を払って入ってくださるわけですから、市民が参加することでこれだけのものができるとか、こういう世の中に変わるとか、こんなにいろんな市民参加の母体があり、参加したら自分の生活も楽しくなるとか、何かを思わせることだけはやってください」と申し上げていました。

 スキルがどうとか、きれいにつくるとかではなくて、見た人に何かを感じてもらい、自分も参加してみようかというモチベーションを与えるようなことをやってもらいたかったんです。そういう意味では、市民参加のプログラムも成功したと思います。その成果は、サラゴサ万博にも受け継がれ、市民パビリオンに日本から大勢の人たちが参加しています。

冷凍展示室内に展示された「冷凍マンモス」

マンモス発掘・展示陣頭指揮して実現

 個人的には、冷凍マンモスの展示が、想い出深いですね。ロシアとの交渉に何回も行くなど、自分自身で陣頭指揮をして進めたんですが、かかわった人たちはけっこうマンモスにはまっていました。シベリアでマンモスを掘り出すために、鳥や豚の骨に磁気探査機がどんな反応をするかといった実験を北海道でしたこともあるんですよ。

 冷凍マンモスを展示するアイディアは過去にも何回もありましたが、成功していませんでした。タイムリーにあれだけのものが出る保証はなく、成功率は20%くらいと言われていましたから、ついていたと思いますよ。

リピーターの多さが愛・地球博の特徴に

 こうしたいろんな要素が相まって、リピーターの多さが、愛・地球博の特徴になりました。それが、来場者が1500万人という当初の予想を大きく上回る、2200万人に達した一番の理由だと思います。こうした事業の成功は、成果の継承にもつながったと思います。愛・地球博では、私自身いろんな経験をさせていただきましたが、地元の方たちもいい経験をされたと思います。生物多様性条約COP10や、愛・地球博がキックオフイベントと位置づけられていた、国連ESDの10年の最終年に開催されたESDユネスコ世界会議でも、愛・地球博の経験は役立ったのではないでしょうか。

中日新聞夕刊 平成27年2月20日付掲載

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