インタビュー

株式会社にんじん社長・にんじんCLUB代表 伊勢戸 由紀さん

費者と出会う場づくりを通じて有機農産物の宅配もっと広げたい

 私は、新幹線が開通し、東京オリンピックが開催された1964年生まれで、高度経済成長をおう歌していました。でも、高一の時に、やせこけたアフリカの子どもたちをテレビで見てショックを受け、人の命の役に立つ仕事をしたいと思って、日本福祉大を選びました。

 そこで社会学のゼミの先生がテキストにしていたのが、ローマクラブの『成長の限界』でした。石油や資源の枯渇、自然破壊などの問題を知り、このままではまずいと思いました。一方、知多半島の美浜町への大学の移転で下宿生活を始め、自分で食べ物を選ぶようになりましたが、どの食品にも食品添加物が使われていて、買いたいものがなく、安全な食品を食べたいと思うようになりました。

無農薬野菜食べる人 探していると手紙

 こんな思いから、私は、会員制の宅配システム「にんじんCLUB」がスタートした翌年に、中部リサイクル運動市民の会(中リ)に入り、その担当になりました。

 81年に誕生した中リは、不用品の情報交換やフリーマーケットに取り組んでいました。その一方で、有機農業の生産者の集会や勉強会も開いていました。そして、86年、東白川村の農家から「無農薬野菜を食べる人を探している」という手紙が来ました。

 当時、農家は、形や大きさなどが規格に合わないと出荷段階ではねられるため、野菜の半分くらいを捨てていました。しかも、無農薬野菜は、規格外のものが多かったんです。そこで、スタッフが現地を見に行って「おばちゃんたちの野菜を全部もらいましょう」という話になりました。まず、段ボールに野菜を入れて、消費者に直送してもらうことから始めました。それが新聞に紹介され、他の農家からも問い合わせがあり、長野県松川町、静岡県浜松市、岐阜県各務ヶ原市の無農薬の野菜も扱うことになったんです。

南生協病院の一角で営業している「レストランにんじん」

名古屋の南生協病院で有機野菜レストラン

 にんじんCLUBは来年で30年になります。石の上にも三年といいますが、私の場合は“畑の上にも30年”ですね(笑)。

 最初の20年くらいは有機農産物などの宅配が中心でした。その後、2006年に、デイサービス施設でカフェを始め、2010年には名古屋市の南生協病院にレストランをオープンしました。今年4月には、この病院とJR南大高駅前を結ぶ「南生協よってって横丁」で、有機野菜のカレーショップをオープンします。このように、各地で協働による地域づくりの仲間として、にんじんCLUBを選んでもらっています。

食生活の困りごとなどコンシェルジェに相談

 病院らしくない病院にしたいという、南生協病院の一角で営業している「レストランにんじん」には、病院帰りの人や入院患者、お見舞いの家族の他、地域の人たちも訪れます。私たちの造語ですが、2名の「オーガニックライフスタイル・コンシェルジュ(食の案内人)」が、食生活の困りごとや野菜のおいしい食べ方、保存の仕方などの相談に乗っており、会員になってくださる方も多いですよ。毎月第一土曜日には、病院職員と一緒に、地球(ほし)の子マルシェを開催し、有機農産物や無添加食品、手芸品などを販売しています。

 1500軒の宅配を5年で倍の3000軒にすることが今の目標です。そのためにも、こうした場づくりを事業の柱として、丁寧に消費者と向き合うことを大切にしたいと思います。

にんじんCLUB農場“ど根性菜園”で毎月開催中の無農薬野菜作り講座

カレーの店でフェアトレードのスパイス

 「よってって横丁」は、マンション部分に住む高齢者を含めた多世代の交流を目指す複合施設で、カレーショップのテーマは、地球とのフェアトレードです。この店では、オーガニックのフェアトレードスパイスを取り入れます。「もうひとつのチョコレート展 in なごや」というフェアトレードチョコレートを中心とした様々なイベントが今、愛知県内の自然食品店などで開催されていますが、その締めくくりのイベントが、2月14日(土)午後に、名古屋・栄のセントラルパーク地下街「パークスクエア」で開催されます。そこで、フェアトレードカレーの試食会も行います。

 大学生の時に「地球を大事にしなければいけない」と教わりましたが、オーガニックという価値観に加えて、新しい店で、フェアトレードがどれほど大事かを伝えられるようになるのはとてもうれしいですね。

中日新聞朝刊 平成27年2月5日付掲載

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