インタビュー

名古屋大学大学院理学研究科教授 上川内 あづささん

 ショウジョウバエの求愛の羽音で音を理解する脳の仕組みを研究

 音楽を聴いて感動したり、悲しくなったり、うれしくなったりするように、音は感情を動かすことができます。また、虫でも、鳥でも、イルカや人でも、多くの生きものが音を使ってコミュニケーションしています。意思疎通はグループを形成するうえで必要なことで、それを円滑にこなし成立させる仕組みに以前から興味がありました。でも、人でもどんな生き物でも、音からどう意味を取り出しているかは全然分かっていません。分からないことを知ることは人類の財産になると思います。

研究で使われるショウジョウバエ

脳の神経細胞の回路図を作成

 そこで、私たちはショウジョウバエを使って、音を理解する仕組みを研究しています。ショウジョウバエは、羽音を使って求愛するというおもしろい特徴があって、自分の種の音とそうでない音を聞き分けているので、音を理解する仕組みの一番シンプルな形を解き明かすのに最適だと思っています。

 実験では、遺伝子操作で緑色の蛍光たんぱく質を脳内のいろんな細胞に発生させ、求愛の音や人工的に作った音などを聞かせた時に、脳のどんな場所がどう興奮しているかを知るために、その光り具合などを顕微鏡で観察しています。

 それによって、脳の神経細胞のどことどこがつながっているのかを調べて、路線図のような神経細胞の回路図を立体的に書いていきます。今は、聴覚器から入って、脳の中で最初に音を受け取る部分から次のところに行くくらいまでがわかっています。この聴覚のルートをたどっていくと、最終的には、音を聞いて判断してどう行動に移すかを決定する部分にたどり着きます。

音楽がなぜ美しいか知る道も開けるかも

 この研究を始めて12年になります。時間も労力もすごくかかりますが、データを解析するコンピューターも進歩しており、あと10年かそこらで、ルートは全部分かるだろうと思います。そこで何が起こっているかは、道筋を見るだけでは分からないので、別にダイナミックにとらえていく必要はありますが…。

 ショウジョウバエが求愛の音を理解する仕組みを知ることができれば、人はなぜ音楽を美しいと感じるのかといったことを知る道も開けるかもしれません。音楽を聴いてぞくぞくしたり、悲しくなったりするのは情動の部分で、すごく求愛と近いところにありますから。

近所に虫や鳥のいる空間残したい

 こういう研究は、ある程度生きものが好きでないとできません。私は、子どものころから生きものが好きで、虫取りをしたり、バードウォッチングをしたりしていました。この研究に入ったのも、生きものが好きだったからというのもあります。そういう意味では、これからの子どもたちにも、ご近所に虫がいたり、鳥が見えたりするような空間を残していきたいですね。

中日新聞朝刊 平成26年8月18日付掲載

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