インタビュー

NPO法人ラムサール・ネットワーク日本水田部会長/田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト 呉地 正行さん

生き物いっぱいの田んぼ取り戻そう “ふゆみずたんぼ”は湿地の役割も

 この100年で全国の湿地は6割以上、宮城県では9割以上も減ってしまいました。かつて田んぼは、ハクチョウやガンなど水鳥の生息地として湿地の役割も果たしていました。しかし、水はけをよくするほ場整備による乾田化が進み、冬の田んぼはからからに乾いて、水辺の生き物がすめなくなってしまっていたのです。

渡り鳥だけでなく農業にもメリット

 宮城県では、蕪栗沼と伊豆沼に渡り鳥が集中し、周辺の農作物への被害や鳥の伝染病や感染症が一気に広がるリスクが問題になりました。生息地分散のために、収穫後の冬も田んぼに水を張る“ふゆみずたんぼ”の試みを始めました。これは、鳥たちだけでなく、農業面でも大きなメリットがありました。

 雑草が生えにくくなり、生き物が増え、土壌も豊かになりました。害虫を食べるカエルやクモだけでなく、害虫がいない時期にそれらのえさになる“ただの虫”も増えました。害虫も含めていろんな生き物がいる状態で経済的に成り立つように水田の生物多様性を総合的に管理していこうというのが、最近の潮流なんです。

初めて日本の水田がラムサールに登録

 そのようにして「蕪栗沼・周辺水田」は、2005年に水田を広く含む湿地として初めてラムサール条約湿地に登録されました。ふゆみずたんぼで、農薬を使わなくてすむようになったことで、ドジョウ、フナ、ナマズ、タニシなども獲れるようになりました。これらは人間が食べることができる生き物です。つまり、田んぼでごはんもおかずも獲れるんです。今後はこのような“水辺の幸”が私たちの生活を救うことがあるかも知れません。

 ふゆみずたんぼをはじめ田んぼの生物多様性を取り戻す様々な取り組みを共有し、広げることを目指して、田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト(通称・田んぼ10年プロジェクト)が今年スタートしました。

田んぼ10年プロジェクトキックオフ集合写真

18項目の目標を設定達成に向けて情報交換

 田んぼ10年プロジェクトは農家、自治体、環境団体、研究者、企業、消費者団体など様々な分野からのメンバーで構成されています。興味があればどなたでも入っていただくことができ、生物多様性の向上をめざす田んぼの管理でそれぞれが実践していることの情報交換をしたり、取り組みたい調査やアイデアを協力して実践できる場として活発に活動しています。2010年に開かれたCBD・COP10では、生物多様性を回復するための20項目の愛知目標が採択されましたが、田んぼ10年プロジェクトでは、愛知目標に基づいて18項目の水田目標を設定し、これを達成するための具体的な行動計画を作り、分かりやすい冊子も作りました。

 この夏には、宮城県の登米市で第一回目の交流会を開催し、二回目は、大分県で開催する予定です。中部地方の農業者や自治体にもぜひプロジェクトに参加してほしいです。

 このプロジェクトで日本の田んぼが農家にとっても生き物にとっても恵みの場となるように取り組んで行きたいと思います。

中日新聞朝刊 平成25年12月17日付掲載

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