インタビュー

あいち森と緑づくり委員会委員 後藤 齊さん

林業体験を通じて森の良さを知ってもらいたい

 愛知県の人工林率は全国第3位と高く、伐採期を迎えている森も約六割にのぼります。しかし、林業を取り巻く環境は、需要減少による木材価格の低迷などから厳しい状況におかれています。

林地を健全に保つため林業が必要

 人工林の山は手入れをすることで、森林の持つ多面的機能を十分に発揮してくれます。間伐などで、木々が太く丈夫になり、太陽光が地上に入り込み下草が育ちます。それらが地表を覆うことで、土に水を蓄えたり、土砂の流出を防いだりすることが出来ます。このように、林業は山を健全に保つ役割も持っているのです。しかし近頃、林業の停滞により、放置される森林が多く見られるようになりました。担い手不足や木材利用の激減から手入れ不足による山林崩壊が進むことが危惧されています。

植樹体験ができる「オイスカ名倉の森」(設楽町)

「あいち森と緑づくり事業」で水源林を守る

 私は高校の林業科で教師として働いた後、現在は体験を通じて森や山の大切さを感じてもらう活動をしています。その活動の一つが「オイスカ名倉の森」です。愛知県の取り組み「あいち森と緑づくり事業」を活用し、矢作川の源流地、設楽町地内にあった伐採跡地の山林2haをお借りし、オイスカ愛知県支部(公財)の協力をもらいながら、みんなで植樹や下刈りをして山林を守っています。今日まで下流域の都市住民の方を始めとして、日本に研修に来ているフィリピンやインドネシアなどの二十数カ国の人々が、山桜やクヌギ、コナラなどの植樹を体験しました。また地元の保育園で採取した種を子供たちと播種し、苗を育て、植樹してもらったこともあります。

山に親しむことで林業への理解深めて

 自分の所有する山を間伐作業の体験や見学の場として開放しています。その際、植生の状態や林床の土壌状態を観察して、健全な状態の山林とそうでない状態の山林などを比べてもらいながら、林業の大切さを実感していただいています。また山を所有している方が少しでも収入を得られ、山が元気になることを目指して、採算が合わず林内に残されている間伐材を、1トン当たり3000円で買い入れていただくいわゆる「木の駅プロジェクト」にも取り組んでいます。

 林業体験には、お孫さん連れや親子連れで参加して下さる方も多いです。一度体験した家族が何回も訪れていただくこともあります。

 私は一人でも多くの人に「森の中で作業すると気持ちいい」、「緑っていいな」といったことを感じてもらうことが、地域の山を守ることにつながると考えています。こうして林業への理解も深まっていくといいですね。

中日新聞朝刊 平成25年10月23日付掲載

あいち森と緑づくり事業とは

 様々な公益的機能を持ち、安心、安全で暮らしを支える森や緑を守り育て、健全な状態で将来へ引き継ぐため、「あいち森と緑づくり税」を活用し、森林や里山林、都市の緑をバランスよく整備、保全する取り組み。

地域材の利用広げる木材利用ポイントに期待

 戦後に植林されたスギ、ヒノキが伐採期を迎えながら、木材価格の低下や後継者不足に悩む日本の林業。三河地域の現状や今年度から始まった木材利用ポイントへの期待を、新城森林組合参事の林七郎さんにうかがいました。

新城森林組合参事
林 七郎

 この地域では今、植えて20年くらいまでの若い木は山に行ってもほとんどありません。古民家に使われているような大木の需要は減っていますし、スギなどは育ちすぎると加工しにくくなります。そのため、80年くらいになった森は、一定範囲を全部伐採する皆伐をして若い木を植え、長期的に森を若く保つことが必要ですが、ここ10年くらい皆伐はほとんどしていません。補助金が出ない皆伐は、今の木材価格では採算が取れないため、補助金をもらいながら間伐をしているのが実情です。

 この地域は温暖で雨もほどほどに降り、木に適した気候です。木材は、まっすぐで年輪がそろい、赤身と呼ばれる部分が多く、光沢もあります。建築材や建具材として加工しやすく、三河杉のブランドで東京などに高い値で出荷されていました。

 木材価格が下がった今は、そのブランドの木材である三河杉や三河檜で安く木の家を建てるチャンスです。私は、一番いいのは、家計を握る女性に地域材の良さが伝わっていくことではないかと思っています。

 木材利用ポイントには、私たちの森林組合も参加しています。地域材で家を建てるとポイントがもらえるこの制度は、木の家をつくろうという人には魅力だと思います。お得に木材が使える機会ですし、地域の山を応援し守ることにもつながるので、ぜひこの機会に木材利用ポイントを利用して家づくりをしたり、木の製品を使ってみて欲しいですね。

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