インタビュー

NPO法人山の自然学クラブ副理事長 中村 華子さん

台風で被害に遭った富士山の森 人間が手助けして天然の広葉樹林に

 1996年秋、台風の強風によって富士山南麓の国有林では広い面積でヒノキなどの人工林が倒れました。復元には災害に強い広葉樹をできるだけ使い、市民の手を入れながら取り組もうということになり、様々な団体が、区域ごとに国と国有林の管理協定を結びました。

 私たちは、日本山岳会のメンバーが当初中心となり、山の成り立ちを深く学びながら自然を守るための活動をしている団体ですが会員から森づくりの活動をしたいという声が上がり、2003年から5年間ずつの協定を結び、10年以上にわたり活動を続けています。

活動を始めた時のススキ。人の背丈以上ある。

高さ3メートルのススキ野原刈る

 私たちは、この場所を富士山に本来あるような天然の広葉樹林に戻すことを目標にしました。木がなぎ倒されて荒れた森は放っておくと長い間そのままかもしれませんが、人間が関わることで元に戻る時間を早めることが出来ます。

 最初に行った時には、一面ススキ野原でした。ススキの種が風に乗って飛んできて育ったものです。もともと林だったので養分がたっぷりあり、2年目には高さが3メートルくらいにまで伸びていて「何これ?」とびっくりしました。そのススキをある程度刈って、出来るだけ多くの種類の木々を植えました。

 継続的に手入れをしてきた結果、現在はそれらの木々や周りから種が飛んできた木が育って初期の森林・低木林の状態になりました。

今は木も大きく育ち、森らしくなってきた。

同じ標高の南麓で木の種子集める

 富士山は北側と南側で生育している植物が違います。なので、買った苗木を植えるのではなく、同じ標高の富士山南麓の森からいろんな種類の木の種を集めてそれを植えています。売っている苗木の多くは小さなポットで育ち、根がぐるぐる巻いてしまっていて自然に近い状態で根を張れないことが多いですが、自然な状態で育った木は深く根を張り、大地を守ることにもつながります。

 今は、荒れ地など明るいところを好む植物の勢力が旺盛ですが、これからは、富士山本来の広葉樹林の森にある木のうち、成長の早いケヤキやサクラ類などに置き換わっていきます。今年から協定の第三期に入りましたが、予想以上に順調に森の再生が進められたので、あと10年もすれば、ブナ、ミズナラ、カエデ類などの成長の遅い木も育ってきて、本来の森に近づけることができると思っています。

富士山と日本人今後も良い関係を

 富士山と日本人は長い付き合いで、平安時代には信仰の対象となり登山が行われた記録があります。この度、世界文化遺産に登録されたことで、富士山を守る対策は取りやすくなると思います。これからも、山と人間がよい関係を保っていくことが出来るよう様々な人々が協力し努力し続けないといけません。

 自然を守る活動が成果を上げるには、多くの人が自主的に楽しみながら継続的に行うというのが理想です。私たちの活動に参加してくれた人たちが自然の楽しさや心地よさなどを感じて、出来る範囲で続けてくれるようになればと思っています。

中日新聞朝刊 平成25年9月20日付掲載

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