インタビュー

日本福祉大学 国際福祉開発学部教授/なごや環境大学常任幹事 千頭 聡さん

市民のまちづくりに参加する意思が持続可能な社会づくりの必要条件

 ラオス北部の世界遺産の町ルアンパバーンからさらに北の町に何度も通い、持続可能な開発のあり方を考えてきました。木材輸出や人口増による食料や燃料確保のための伐採によって、森が減り、山が荒れ、水質の悪化などによって90年代にはラオスの子どもの死亡率は約3割にも達していました。

全てが少し良くなり暮らしが安定する

 農民に焼畑をやめて森を守ろうと話しても、自分たちの食料はどう育てればいいのかという話になります。焼畑をやめ米を買うお金を稼ぐために、山で換金作物を作ろうとしても誰も買ってくれない。となるとマーケットを勉強する必要が出てくる、というように、物事はいろいろなことがつながっています。途上国では、食料、森、水、教育、農業など、全てが少しずつよくなることで、暮らしは安定するのです。

 持続可能な社会をつくるうえでは、これさえできれば持続可能な社会になるという、数学でいう十分条件はなかなかなく、少なくともこれは必要という必要条件はたくさんあると思うんです。地域、社会状況、対象となる世代によっても必要条件は違います。私たちは、日々、必要条件をみつけ、クリアしようとしているんです。

スラムの住民らが朝から道路を清掃

 世界各地のコミュニティを見ると、同じ地域でも、元気なコミュニティと元気でないコミュニティがあります。インドのムンバイのあるスラムでは、道路などが清潔に保たれているのですが、朝6時ころから人々が一斉に道路を清掃しているからでした。ケニアでは、女性たちがグループをつくって農業を始め、子育てなどの悩みを井戸端会議で解決し、少しずつ生活を改善していました。日本の中山間地域でも、がんばっている地域はいろいろあります。

 共通しているのは、住んでいる人たちが主体的にまちづくりに参画していることです。先進国でも、自分たちで何とかしようと思う市民がいかに育つかは、持続可能な社会づくりのとても大事な必要条件の一つです。

なごや環境大学は幅広い世代が一緒に学ぶ。

課題を持ち寄り成果を持ち帰る

 なごや環境大学は本当の大学ではありませんが、自分たちのまちをどうしたいかについてのもどかしさを持ち寄り、議論する学びの場です。またその学びを地域や職場、家族に持ち帰ることで、一定の成果を上げてきました。誰かが決めて全部やるのではなく、自分たちでできることを持ち込んでもらうところが特長で、各地にもその動きは広がりつつあります。講座もそのように成り立っていますので年間650くらいの活動のほとんどがNPOや企業の持ち寄り講座です。

 先だって、なごや環境大学に関わる市民やNPO、企業が集まり、持続可能な開発のための教育(ESD)など4つの分科会で交流ワークショップを開きました。ESDという言葉が少しずつ浸透し、市民活動団体などが互いの接点を考えるようになってきたように感じます。次の一歩として、名古屋でいろんな活動をしている人たちをつなげていくのも、大事な役割だと思っています。

中日新聞朝刊 平成25年8月19日付掲載

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