インタビュー

名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻特任准教授 杉山 範子さん

4800の自治体が「市長誓約」 地域の気候政策で先を行くEU

 学生時代に生活、経済などすべてに影響するお天気に興味をもって、気候学を学びました。気象キャスターになって環境の話題も取り上げましたが、知識が足りなくて、もっと勉強したいと思い、大学院に入りました。そこで「日本に足りないのは政策だ」という先生の言葉に、私の進むべき道はこれだと思ったんです。

ベルリン市民エネルギー会議の署名活動の様子

20%以上削減のEUの目標以上に

 去年、欧州連合(EU)の地域気候政策(温暖化防止政策)の調査のために半年間、ドイツに行ってきました。

 EUでは、2020年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を1990年に比べて20%削減するというEUの目標以上の削減を約束した上で、地域のエネルギー計画をつくる「カベナント・オブ・メイヤーズ(市長誓約)」が爆発的に広がっています。2008年から始まったこの取り組みに、今では約4800もの自治体が自主的に参加しています。

 スタッフ、経験、情報をたっぷり持っている気候政策のネットワークが、スタッフを派遣したり、計画づくりのツールを提供したりしており、人口が少なく担当者がいなくて計画づくりが難しいような自治体も手厚くサポートされています。

目標が定まらず計画を見直せず

 一方、日本はというと、自治体は「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づいて温暖化対策の計画を作ったものの、国の温暖化対策の中期目標が定まっておらず、京都議定書の第二約束期間には不参加のため、計画の見直し時期が来ても、困っているような状態です。

 ドイツでは、自治体は水道、廃棄物処理などだけでなく、電力の供給にも責任を持ちます。電力会社と契約して電力会社に任せる場合もありますが、自治体が自ら発電・受電して供給するところもあります。市民も地域のエネルギーの供給について関心を持ち、自治体に対して変更を求めて立ち上がることもあるんですよ。

ドイツに根付く環境配慮の生活

 ドイツで印象的だったのは、市民の暮らしに環境配慮が根付いていること。それは、CO2を減らすためでだけなく、そういう生活の方が快適で、便利で、気持ちいいと感じるからなんです。食べ物がどうやって作られどこから来るのか、エネルギーがどんなふうにできるか、水や廃棄物はどう処理されているか等は、普段の生活でなかなか目に見えません。でも、こうした目に見えないもののあり方そのものが、環境に大きな影響を与えているのだと思います。特に、いま、エネルギー供給のあり方を問わなくてはいけません。EUの市長誓約はそれぞれの自治体で、自らのエネルギー計画をつくる取組みです。地域のエネルギーのあり方について、自治体も責任を持ち、私たち市民も関心を持って、これまでのスタイルを変えていく時が来ているのではないでしょうか。

中日新聞朝刊 平成25年7月12日付掲載

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