インタビュー

メタセコイアの森の仲間たち代表理事 興膳 健太さん

猟師と漁師が協力して里山を保全し日本一産物がうまい長良川流域圏に

 学生時代にまちづくりに取り組む仲間たちと活動する中で「長良川流域圏で持続可能な地域社会をつくれると良い。そのためには、誰かが上流に行って活動する必要がある」という思いになりました。それまでの出会いから郡上の人は、自分たちの地域を好きな人が多く、その根っこに長良川があると感じていたこともあって、六年前、卒業と同時に郡上に来ました。

人と動物の間に線引きする必要

 私がスタッフとして入ったNPO法人メタセコイアの森の仲間たちは、夏はキャンプ場での自然体験プログラムをしていますが、冬は仕事がありませんでした。何とか仕事を作りたいとの思いが、猟師を始めるきっかけとなりました。

 周りを山に囲まれた郡上のような中山間地域では、猟師の存在は必要不可欠です。猟師が、山に住むシカやイノシシといった動物にとっての“圧”となり、生活領域の境界線となって結果的にお互いの生活を守る役割を担っていました。今では、世代交代や人手不足、人口の流出も手伝い、猟師の数も少なくなるばかりか、山の手入れも前ほどには頻繁に行われていません。そうすると、次第に動物も人の居住地域に入ってくるようになり、農作物などが被害にあうことになります。

 メタセコイアの森の仲間たちの事業として立ち上げた猪鹿庁は、今、おりやわなを無償で貸し出したりして農家が集落ごとにシカやイノシシから作物を守る活動の応援にも力を入れています。ただし、これでは“ 応急処置”にしかなりません。

夏は自然に触れるプログラムを多く企画している

いい山をつくるには人の手を入れること

 猟師さんたちは「いい山にはいいシシがいる」と口をそろえて言います。いい山というのは、実のなる広葉樹が多く、手入れがされていて、適度に下草が生えている山のことです。いい山をつくるには間伐を行ったり、植樹を行ったりといった人の手が欠かせません。猪鹿庁では、山育課という部門を設け、たくさんの人たちに山づくりの大切さを理解していただけるように活動を行っています。

 そのためにまず、県の事業の一つとして、「猟師と漁師の里山保全プロジェクト」シンポジウムを実施しました。いい山は豊かな水を湛え、それが川、海へと流れ出ます。山の恵みは、豊かな川、海を作っています。そこで、猟師と川・海の漁師が連携して、日本一、山・川・海の産物がうまい長良川流域圏を目指そうというものです。このシンポジウムがきっかけで川の漁師さんから、漁協が行っている植樹活動への協力呼びかけがあり、五月の植樹に猟友会が参加することになりました。

 人間が入って豊かな山を育てることで、山は動物たちにとって恵みの山になり、動物と人間の生活も線引きされることになります。このようにして持続可能なサイクルを生み出し、“応急処置”ではない、双方にとって暮らしやすい環境を作っていきたいと思います。

中日新聞朝刊 平成25年3月30日付掲載

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