インタビュー

金沢大学人間社会学域地域創造学類 准教授 香坂 玲さん

 COP10から2年 広がりつつある生態系を活かした社会づくり

 生物多様性第十回締約国会議(COP10)で合意した愛知目標には、生態系をつなげてネットワーク化したり、農林漁業を持続可能なものにしたりと、多様な目標が盛り込まれています。その達成に向けて、愛知県では、「あいち方式」と呼ばれる取り組みを、里地モデルの知多半島、市街地モデルの名古屋東部丘陵、里山モデルの西三河の三つのモデル地域で、進めてきました。ポテンシャルマップと呼ばれる種ごとの生息適地図をつくり、開発によって分断され孤立した自然をつなげて生態系ネットワークを形成し、生物多様性保全と持続可能な利用の両立を図ろうというものです。

身近な生活の中の生物多様性に関心

 COP10を通じて、自然というストックだけでなく、自然のめぐみである生態系サービスというフローにも関心が広がり、生物多様性は、身近な地域に関わりのあることとして認識されるようになってきたと思います。また、名古屋では、藤前干潟の保全を通して湿地や鳥などのシンボルに注目が集まってきましたが、COP10を契機として、微生物の働きが生活に密着していて、薬品や食品などのビジネスになっていることが意識されるなど、生物多様性の理解のすそ野が広がりました。

震災復旧と議長国の責務の両方に対応

 この二年間は、こうした幅広い分野の問題を認識し、行動に移し始めた時期でした。ただ、東日本大震災から一年前後は、生物多様性どころではないという雰囲気が日本全体を覆っていました。その一年の間にも他の国々では議論が重ねられていました。生物多様性の分野で日本は、震災という緊急事態とCOP11まで続くCOP10の議長国としての責務の両方に対応しなくてはならないたいへんな二年間だったのです。

 震災の復旧プロセスは、半年から一年くらいはハードウェア重視でしたが、今は、災害や自然との向き合い方を見直していく中で、コンクリートで元に戻すのではなく、生態系を活かして長期的にどういう社会にしていくかに関心は高まってきていると思います。

 COP10以前から若い人たちの価値観は多様化し、東京一極集中ではなくなってきています。若者が活躍して、新しい価値観の下で、自然をより活かした、経済的にも付加価値が高いものを生み出していくことが大切です。

学生たちと能登へ行き生態系のつながりを学んだ

若い人たちが社会の担い手となるために

 2014年には国連持続可能な開発のための教育(ESD)の十年の最終年会合が愛知・名古屋で開催されますが、ESDというのは、新しい社会をつくる担い手を育てていくことだと思います。

 私は、世界農業遺産に登録された能登半島、その南の白山などに学生たちを連れて行って、地元の人たちと話してもらう機会を作っています。担い手となっていくには、若い人たちが、生活と生態系のつながりを五感で理解し、課題に取り組むことが必要だと思うからです。

中日新聞朝刊 平成24年9月23日付掲載

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