インタビュー

広島経済大学教授・サスティナブルコミュニティ研究所所長 川村 健一さん

違う技術を持つ人が助け合う いつまでも変わらない生き方

 中国とインドにはさまれたブータンなど二つの大国にはさまれた小さな国の町を、毎年見て回っています。そこに住む人たちのウェイ・オブ・ライフ(生き方)を見るためです。隣り合う国から流れこむ文化や、歴史の中で生まれた、互いに助け合って人々が暮らす宝石のような町が世界にはいっぱいあります。

昔から変わらないジャマ・エル・フナ広場の風景

不安なく生きていける子どもたちが元気な町

 最初に訪れたのは、世界遺産の、ジャマ・エル・フナ広場があるモロッコのマラケシュでした。広場の景観が遺産だと思っていましたが、景色だけでなく、そこでの暮らしは1300年以上も変わっていませんでした。銅をたたいて皿を作る人、大工、レンガを作る人など、すべての人が異なる技術を持って生きています。

 お金が回るのではなく、人のサービスが回る。それが経済の原点です。多くの人がサラリーマンでお金しか持っていないという都会では、お金がないと生きていけませんが、ここでは、違う仕事を持つ人たちがお互いに助け合いながら、サービスが循環しているのです。互いに持っているものをシェアし合いながら、コミュニティ全体で支え合う暮らしがそこにはあります。

 風土によって、暮らし方は異なりますが、こうした町に共通しているのは、そこにある材料で家を作り、暮らしを回していき、ほしいものがあれば、ちょっとだけたくさんものを作って外から買うという、いつまでも変わらなくてもいい生き方です。何の不安もなく安心して生きていけるこういう町では、子どもたちが元気で、目がキラキラ輝いています。

様々な用途に使える人生の劇場となる場

 都会では、道路は車が通るところ、家は人が住むところ、と機能が分かれていますが、こうした町では、道路は、庭でもあり、避難場所でもあり、遊び場でもあり、ひょっとしたら食堂にだってなるのです。日本でも長屋の通路は、お互いに何をしているかが分かるコミュニケーションの場でした。伝言版のようなものでもあり、人生の劇場でもあるのです。こうした「場」が、シェア(分かち合い)の文化の原点にあります。様々な用途に使えて、そこに行けば、助けてもらえる場なのです。

 われわれの今の生活にはそんな場がなくなってしまいました。コミュニティを再生するために、様々な人が集まって生活するコーポラティブハウスなどのアイディアが生まれ、日本でも各地に広がってきています。

頭で考えるのでなく見ることで感じる

 持続可能な開発のための教育が注目されていますが、教育でも、互いを知ることによって、成長があります。頭でこうしなければと考えるのではなく、見ること、知ることで何かを感じることが大切です。違う人たちで成り立つ町のように、違いを大事にすることで、様々な答が見つかるのです。

中日新聞朝刊 平成24年6月5日付掲載

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