インタビュー

ユニバーサルデザイン総合研究所代表取締役所長
赤池 学さん

人間の知恵を使い尽くして 創造するスマート社会

 最近、スマート社会という言葉が注目されています。ITを活用して家庭やオフィスなどで電力需要を調整し、ピーク時の省エネも自動的に行える「スマートグリッド」を中心とする社会のことです。しかし、私は、人間の知恵を使い尽くして創造する社会こそ、本来のスマート社会だと思います。

 日本は、車も家電も省エネが進み、生活者の環境意識も高まっているのに、エネルギー消費は増え続けるというエコジレンマに陥っています。省エネゆえに保有台数が増えたり、走行距離が伸びたりしているためです。ライフスタイルを根本的に変えて、こうしたジレンマを克服するのがスマート社会の本質です。

熱主電従社会がこれからの選択肢

 東日本大震災で、大容量の電力ネットワークも不確かで危ういものであることが分かってきました。エネルギーには、電気だけでなくガスや太陽熱、下水の廃熱など様々な熱もあります。これからは、熱が主で電気が従の「熱主電従社会」がスマート社会の選択肢かもしれません。

 熱は1000度くらいから40度くらいまで、段階的に使うことができます。こうした熱のカスケード利用とエリアにおける熱の面的利用、そこに電力マネジメントシステムをいかにうまく組み合わせるかが、スマート社会の骨格になるでしょう。

自然の光や涼気を取り入れる住宅に

 住宅・建築業界では震災以降、コストをかけ技術を使ってエネルギーを生み出すのではなく、自然の光や涼気を住宅に取り入れる、パッシブ・エコロジーデザインが大きなテーマになっています。窓の配置や生け垣を工夫して地域特有の風を活かしたり、調湿性、蓄熱性がある土間や土壁を活用したりといった様々な知恵が日本にはありました。

 「家庭」という言葉は家と庭でできていますが、庭は家に比べ、その役割が注目されてこなかったように感じます。京都の町屋の坪庭は、季節の鳥や虫が集まってくる感性空間であると同時に、涼気や光を取り込む環境装置でもあります。庭の大切さを思い出すだけで、スマートな住宅づくりができるのです。

家は近隣の人たちと使いこなす器だった

 最近、江戸の下級旗本の家のデザインを調べていますが、庭に面して西南に縁側と畳の大部屋があり、そこはコミュニティの人たちが集う場所として活用されていました。そういうインテリアでも、エクステリアでもない近隣と共有するミッドテリア空間を日本人は大切にしてきました。家族は、敷地面積の1/6くらいのところに住んでいて、そこだけを高気密高断熱にしていました。戦後の住宅は家を丸ごと高気密高断熱にしてきましたが、家はもっと近隣の人たちと使いこなすための器だったことに気づき直すことも、スマート社会の実現に必要なことでしょう。

中日新聞朝刊 平成23年8月28日付掲載

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