インタビュー

矢作川水系森林ボランティア協議会 代表・木の駅アドバイザー 丹羽 健司さん

 今年は国際森林年です。世界の森林の破壊を食い止め、持続可能な形で利用することを目指して、各国で普及啓発など様々な活動が展開されています。日本でも、放置され、荒れてしまった森林を再生するために、森と人のつながりを取り戻し、森林と山村を元気にするための取り組みが各地で繰り広げられています。今回ご紹介する木の駅をはじめとする取り組みもその一つです。

木の駅、森の健康診断などで森と村のにぎわい取り戻したい

 森に本格的に関わり始めたきっかけは2000年の東海豪雨でした。矢作川流域で数百ヵ所の山が土砂崩落したのを目の当たりにし、手入れされない山がどれくらいあるのかを知りたくて、2005年に「森の健康診断」※1を始めました。その結果、日本の人工林の約3分の2がすぐに間伐しなければ環境面でも防災的にも危険な状態にあることが分かりました。

※1:市民ボランティアと研究者が協力して、100円グッズを使ってスギやヒノキの混み具合、植生、土壌など50数項目を科学と五感で計測・観察する。研究者グループが結果を集計、分析し、分かりやすい報告書にまとめ、報告会を行う。

材出荷、2軒から40軒以上に増加

 今、普及に努めているのは、地域通貨のモリ券で森林の再生だけでなく、山村商店の活性化も目指す「木の駅」です。軽トラとチェーンソーがあれば素人山主でも参加できるこの仕組みは、高知県で始まりました。それを全国どこでもできるようにしたのが木の駅です。

 道の駅では農産物の売上が増えてお母ちゃんたちが元気になっています。今度は木の駅でお父ちゃんたちが元気になる番です。木の駅を最初に始めた岐阜県恵那市中野方町では、これまで原木を出荷したことのあるのは2軒だけでしたが、たった1年で40軒以上になりました。

 木の駅では仲間づくりが始まっています。間伐も軽トラの荷台にのせるのも仲間でやると楽なので手伝い合うようになります。山がにぎわい、ちょっとがんばれば月5万や10万のこづかいになる。これまでお荷物だった山がお宝に見えてくる。晩酌がつい宴会になります。

 森の健康診断も一緒です。都会の人も地元の人も一緒に森に入って1日ゆっくり測定するうちに友達になります。

「効率を追わない」が私たちの合言葉

 私たちの合言葉は、「効率を追わない」「楽しくて少しためになる」です。

 今進められている大規模機械化・効率化の林業では、一瞬森はきれいになるかもしれないけど、山村もきれいに消えてしまうのではないかと心配です。それよりも人のざわめきがいっぱい聞こえる森と村づくりをしたいのです。その入口は森の健康診断であり、経済循環は木の駅と新たに生まれた間伐材の木製組立キット「組手什(くでじゅう)」※2がサポートするという仕組みができつつあります。

※2:8.5p間隔に切り込みを入れた1.5x4.0pの材を、用途に合わせた長さにのこぎりで切り、切り込みを組み合わせることで、自由なサイズの棚などを作れる木製組立キット。売り上げの5%以上を木の駅の支援や普及に向けることを前提に地域材で製作・販売している。震災避難所には間仕切りや収納棚として鳥取県や愛知県などから多数寄贈されている。

日本の森と村が動き出しました

 森の健康診断は愛知県豊田市で始まり、全国に広がりました。木の駅も、岐阜県恵那市、鳥取県智頭町、愛知県豊田市など各地で立ち上がり、秋には岐阜県大垣市でも始まります。組手什は愛知県名古屋市で開発され、震災支援でも活躍しています。

 これらは、やろうと思えばどこでも誰でも始められることばかりです。ノウハウは全部オープンですし、費用もあまりかかりません。

 森だけが元気になることはできません。それを支える山村と都会が連鎖しながら元気になる小さな循環の仕組みがやっとできてきました。日本の森と村が動き出しました。

【木の駅プロジェクト】軽トラとチェーンソーで晩酌を−素人山主が山仕事

 「軽トラとチェーンソーで晩酌を」を合言葉に、素人山主でも山仕事に魅力を感じることができる木の駅プロジェクト。掛け声だけでは進まない間伐も、地域愛と晩酌の魅力ですいすい進んでいる。

細い木も伐採し搬出

放置のC材も搬出

 山では、間伐されてもほとんどが切り捨てられている。市場には3メートル以上で真っすぐでなければ出荷できない。トラックや林業機械も必要になる。木の駅では、50センチ以上なら1トン3000円の相場に、3000円を上乗せした6000円で買い取る。人を雇うと赤字になるが、小遣い稼ぎとしては魅力のある価格で、素人山主も放置された材や間伐された材を山から次々に運び出す。

それぞれに割り当てられた木の駅の置き場に搬入

検量所で材の重さを測る

自分で検量し搬入

 材は、軽トラックで木の駅まで運び、自分の名札が立つ置き場に整理して積む。出荷伝票には、検量所で測った重さを記入する。検量所がない場合は、木の直径と長さを自分で一本一本測って記入する。いずれの場合もすべて自己申告で、コストのかかる再チェックはしない。顔の見える関係の中で誰も悪いことはしないという性善説に基づく仕組みだ。

モリ券イメージ

モリ券が使えるレストラン

登録店舗でモリ券

 出荷伝票をモリ券の交換店舗に届けると、地域内の登録店舗だけで使えるモリ券が発行される。モリ券は、1枚で1000円までの買い物ができる。ただし、おつりは出ない。大型店舗やコンビニでは使えない。

差額は寄付などで

 岐阜県恵那市中野方の場合、材はチップ用として1トン3000円で引き取られる。6000円との差額3000円をどう埋めるかは、どの地域の木の駅プロジェクトでも成功のカギとなる。差額は、国や自治体などの助成や補助のほか、志〜材(しーざい)と呼ぶ材の出荷者の寄付によってもまかなわれる。志〜材の多さは地区への思いの反映でもある。

 鳥取県の智頭町や愛知県豊田市では、組手什(くでじゅう)という木製組立キットの売上の一部で差額を埋める方法も取り入れている。

中日新聞朝刊 平成23年6月5日付掲載

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