インタビュー

ラムサール・ネットワーク日本 共同代表 柏木 実さん

市民の提案から生まれた「国連生物多様性の10年」

 「国連生物多様性の10年」が今年から始まりました。これは、昨年10月に開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向けた市民グループの提案から生まれたものです。

生物多様性を保全する世界全体の枠組みを

 生物多様性の保全は、生物多様性条約に批准していない米国も含め、様々な国連機関、自然保護団体以外のNGOなどとも一緒に取り組んでいく必要があります。そこで、ラムサール・ネットワーク日本の共同代表の一人、呉地正行さんが、条約の枠組みの中だけではなく生物多様性保全の世界全体の枠組みをつくろうと、「国連生物多様性の10年」を発案しました。私はCOP10に向けて結成された生物多様性条約市民ネットワークに作業部会を設けて、日本政府が議題として提案するように働きかけました。

市民の意思明確化で日本政府が決断

 資金を含め重い責任を負うことになるため、政府が提案を決意するまでには半年以上かかりました。内外のNGOが名を連ねた「NGOイニシアティブ」で、市民の側が積極的に取り組んでいく意思を明確にしたことが、決断の決め手の一つとなったのは確かです。自然保護団体と政府は開発を巡って対立してきましたが、政府としてNGOと協力してやっていこうという方向性が次第につくられる中で、今回の結果が生まれたことに、大きな意味があります。

愛知ターゲットを実現する枠組みに

 COP10で決まった愛知ターゲットでは、2020年までに生物多様性の損失を食い止め、2050年までに生物多様性を回復させることなどを目標に掲げています。生物多様性への関心を一部に留めずメインストリーム化(主流化)し、目標を達成するために、計画をきちんと立て、進み具合をチェックしていくことが大切で、生物多様性の10年はそのための枠組みとなります。

多くの市民が田んぼの生きもの調査などのイベントに参加している。

湿地は生物多様性が一番豊かな場所

 生物多様性の保全にとって湿地の保全はとても大切です。山間地の川から湖、河口部、干潟、浅海域まで、陸と水の境目は全部湿地です。人がつくった田んぼも湿地に含まれます。陸にすむ生物と水の中にすむ生物の両方を支える湿地は、生物多様性の一番豊かな場所の一つです。しかし、開発する側からみると、湿地は浅くてすぐ埋め立てができるため、いろいろと葛藤があったのです。

生物多様性の損失を避けながら復興を

 東日本大震災では、天然記念物のヒヌマイトトンボがせい息していた福島県相馬市の松川浦の洲やその上の松林がなくなってしまうなど、多くの生物多様性が失われました。下手をすると、復興の過程で湿地がさらに失われる恐れもあります。生物多様性を賢明に利用しつつ、できるだけ人為的損失を避けながら復興・再生することも、生物多様性の10年の大切なテーマだと思います。

中日新聞朝刊 平成23年5月22日付掲載

湿地のグリーンウェイブ
生物多様性条約事務局は5月22日の国際生物多様性の日に植樹をする「グリーンウェイブ」を呼びかけています。ラムサール・ネットワーク日本でも、4月から6月まで湿地のグリーンウェイブを開催中で、各地で田植えや自然観察会などが行われています。

一覧に戻る

2016 愛知環境賞

第75回 中日農業賞

地球のいのち、つないでいこう

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ