インタビュー

名古屋大学大学院環境学研究科教授 森川 高行さん

 EVなど次世代自動車の普及で 低炭素の次世代環境都市実現を目指す

車が二酸化炭素(CO2)の大きな排出源に

 CO2濃度の上昇などによる気候変動で、日本の平均気温は過去100年間に1度上昇しました。大都市ではヒートアイランド現象も重なって上昇幅はさらに大きく、東京では3度、名古屋でも2.7度に達しています。

 エネルギー問題も深刻です。化石燃料はいずれ枯渇します。このままいけば、石油は、3、40年先には需給関係が崩れて暴騰し、市民生活に使えなくなるでしょう。

 一方、世界の人口の半分くらいが住む都市は、人為的なCO2の大きな排出源になっています。また、日本のCO2排出の内訳をみると、約2割を運輸・交通部門が占め、そのうちの9割くらいが車から排出されています。

生活の質を下げずに車の利用を減らす

 こうした状況から、私たちは、都市の中のモビリティ=移動に着目し、車の利用を効率的に減らし、人々の生活の質を下げずに環境負荷を少なくする“次世代環境都市”の実現に向けた研究に取り組んでいます。

 環境問題を重視した交通政策としては▽土地利用を変える▽車から他の交通手段に変える▽車自体とその走り方を変える―の3つがあります。今年度から始めた環境省の環境研究総合推進費による研究では、電気自動車(EV)など次世代自動車の普及促進のための都市インフラや制度の検討に重点を置いています。

購入時だけでなく、利用する際のインセンティブを

 次世代自動車には、全部電気で動くEV、ガソリンと電気を使い分けるハイブリッド自動車(HV)、電源から充電するプラグインハイブリッド自動車(PHV)などがあります。

 今のガソリン車を次世代自動車に替えていくための施策として、購入時のエコカー減税や補助金が実施されていますが、それだけでは普及促進はうまくいきません。次世代自動車を利用する際の経済的インセンティブ(動機づけ)や、専用レーンの設置による利便性のインセンティブなど、購入時だけでなく、保有・利用する際のインセンティブを検討していく必要があります。

市民の意識変化のためのアプローチも必要

 また、EVに鉄道や自転車をうまくミックスして、都心部まで電車で来て、EVや自転車に乗り換えたり、ガソリン車の都市部での利用に課金したりといった、都市交通におけるハードとソフトを総合したモビリティ・デザインを構築していくことも求められています。

 こうした都市交通計画におけるハードとソフトだけでなく、市民が積極的に自ら行動を変えていくことも重要です。行政の取り組みと市民の意識変化という両方のアプローチが必要なのです。

体験を通じてEVやPHVを知るワークショップ

試乗会で乗り心地の良さやパワーを実感

 EVやPHVについては、まだあまり情報がないため、走行中の電池切れやパワーなどに不安を感じている人が多いようです。そこで、1月23日に、「次世代自動車から考える暮らしと都市(まち)」というワークショップを開催し、市民30名に、実際にEVやPHVに乗り、専門家の話を聞き、その後グループに分かれて意見交換をしてもらいました。

 感想を聞くと、乗り心地や加速の良さなどを多くの方が実感し、EVやPHVの魅力、将来性を感じられたことが分かりました。一方で、「充電を考えると遠出は難しい」「1台だけならガソリン車。セカンドカーとしては非常にいい」といった意見も出されました。

好循環の歯車を回すきっかけを追求

 「ハイブリッドカーに乗ると、環境意識が芽生え、他のことも気にするようになった。同じように、EVやPHVに乗ると、環境意識が高まり、行動と意識が影響を与え合って、よい方向の変化が生まれると思う」という声もありました。

 行動と意識の好循環が始まって、人々の不安が取り除かれれば、普及促進に向けた歯車は回り始めると思います。その歯車を回すきっかけをどうしたら提供できるかを追求していくのが今後の課題です。

EVがもたらす社会の変化に注目

 今回の研究のサブテーマとして、低炭素交通システムの実現に向けた制度設計とプロモーション手法の開発に共同して取り組んでいる、名古屋大学大学院環境学研究科教授の竹内恒夫氏(写真右上)と、電通中部支社の伊神崇氏(写真右下)に、今後の取り組みについて聞きました。
  竹内氏は「EVが普及するとどんなまちになるのか、社会にどんな新しい機能が加わるのか、ライフスタイルはどう変わるのか、などを追求していきたい」と、小型化が可能で様々な使い方ができるEVのもたらす変化に注目しています。そして「今後は若い技術者とともにEVの可能性を引き出していきたい」と語ります。

試乗会で様々なメリット伝えたい

 また、伊神氏は、今回のワークショップの成果について「EVには環境以外のメリットもいろいろあります。まだ先の話だと思っていたことが、試乗してもらうことで身近に感じてもらえたようです。試乗会で、見て、触って、乗ってみることが非常に大事だと思いました」と、様々なメリットを伝えていくために、今後も試乗会など、実際にEVに触れる機会を創出していくことの大切さを指摘しています。

中日新聞朝刊 平成23年3月10日付掲載

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