インタビュー

ツリークライミング®ジャパン代表 ジョン・ギャスライトさん

極めてシンプル、でも奥が深い 自然界のコンセプト

ジョンギャスライト事務所提供

ツリークライミングで子どもたちが学ぶこと、 子どもたちに伝えたいこと

 ツリークライミングというのは、専用のロープや安全保護具等を利用して木に登り、木や森、自然との一体感を味わう体験活動です。木の上という、日常とは違う視点で周囲を見ることは、実に楽しいことです。木や森の様子も新鮮に感じますし、ふだん近くで見られない鳥を見ることもできます。

 そんな新しい体験をすることで、自分の悩みがささいなものに思えたり、新しい糸口が見つかったり、自然は間違いなく人を癒してくれます。

 ツリークライミングは「木と友だちになる」ことから始まります。森に初めて入るときにはちゃんと「こんにちは」「お邪魔します」と声をかけてから。人間同士だって、誰かと友だちになろうと思ったら、まずは挨拶から、でしょう。

 次に「相手を知る。理解する」。「ヒノキは火をおこしやすい木だからヒノキ」「スギはまっすぐ伸びる、まっすぐの木だからスギ」。木の存在がだんだん身近になってきます。そしてその木に登ったり触ったりして過ごして、別れ際には「遊んでくれてありがとう」。もうこれで子どもたちと木は友だちです。

 そこで子どもたちに聞くんです。「友だちが困っていたらどうする?」「助ける」「もしもその友だちが木だったらどうする?『助けて』と言っていたら?」「守る!」「守ってあげる!」。子どもたちの答えはものすごくシンプル、でも気持ちのこもった言葉です。その思いを未来へつなげ、周囲へも広げる。環境を守ることのはじまりはそこだと思います。

地球は大きな貯金箱

  森と一口に言いますが、遠くから見ているのと近くで見るのは全然違います。まっすぐ伸びているように見える木も、実はまっすぐじゃない。途中で右に曲がったり左に折れたりしています。

 森にはたくさんの木があります。木の根っこは絡み合っていて、絡み合うことでお互いに支え合っている。でも木が多すぎると絡めないんです。だから適度に手を入れないと元気な森になりません。枝もそう。高い枝、低い枝、高さが様々なほうがいろいろな鳥が集まってきます。台風で木が倒れることもあります。倒れた木はかわいそうだけど、その木が倒れたことによって、日当たりのよくなる木もまた存在します。

 たとえどんな状況でも周囲の役に立っている、倒れた木から僕が感じることです。まっすぐな木もあれば曲がった木もある。高い木、低い木、太い木、細い木…みんな違うから森は面白いんです。これはそのまま人間社会にも言えることでしょう。

 僕はよく子どもたちに「地球は大きな貯金箱だ」と言うんです。木や水がたくさんあって、木が生え、花が咲き、そして鳥、魚、動物たちがたくさんいる。でも、木や水を使ってばかりだと貯金はなくなってしまいます。地球が空っぽにならないために、何ができるだろう?と子どもたちと考えます。リサイクル、リユースももちろん大事。その他に木を植えたり荒れた環境を整備して貯金を増やす努力も必要。子どもたちはよく分かってくれます。

COP10ははじめの一歩

 現在、名古屋ではCOP10が開催されています。「生物多様性条約第10回締約国会議」というのが正式名称ですが、この難しそうなイベントも、実はとてもシンプル。「いろいろな生き物がいたほうが地球は絶対面白い!」。この一言に尽きると思っています。海でも陸でも、たくさんの種類の生き物が住みやすい環境をみんなで守ろうよ、ということなんです。

 僕は、会議に出ない多くの人たちに、どうやってパワーを出してもらうか、それこそが大事だと考えています。一人ひとりが、地球の環境に感謝し、現状を理解し、未来に希望をつないでいく、そのはじめの一歩がCOP10だと思います。

中日新聞朝刊 平成22年10月27日付掲載

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