インタビュー

愛知学泉大学コミュニティ政策学部教授 矢部 隆さん

 飼えなくなった命を、むやみに捨てないで!カメの世界でも、多様性が壊れかけています

観察の面白さが、研究者の道へいざなう

 小学4年の時、獣医の父がクサガメを拾ってきてくれました。しばらくして雨でタライが増水、カメはどこかに逃げてしまい、大泣き!次は自分で捕ろうと。カメは体温が高い夏はすばしこく、素手で捕まえるのは至難の業。そこで行動を観察し、冬に池の底で冬眠することを確認。冷たい池の水に手を入れて窪みを探ると、やはりカメたちがいました。よくよく観察すると、当時のカメの飼育書の内容のいくつかが間違っていることがわかり、自分の観察にもとづき手探りで飼育しました。高校2年から飼い始めたカメは、今年で30歳になります。

名古屋市の堀川で捕獲されたワニガメ。プロフィール写真の子ガメが成長するとこれほど巨大に!

環境と人間に由来する、生態系の変遷

 愛知県内の遺跡からは、突出してニホンイシガメが出ています。ということは、昔はほぼイシガメしかいなかったのかもしれない。次に現れたのが、クサガメ。現在では濃尾平野に多い。江戸時代に盛んであった新田開発により、開けた平地の池や川を好むクサガメが拡がったのかもしれません。ニホンイシガメは山麓に、クサガメは平地にと棲み分けていたようです。ところが近年、山地平地問わずミシシッピアカミミガメ(別名ミドリガメ)だらけに。環境の悪化がイシガメやクサガメの駆逐を後押ししました。清流を好むイシガメに対し、もともとミシシッピ川の下流域に生息していたアカミミガメは、汚水に十分耐えられる。アカミミガメでも棲めるような環境にしてしまったのは、私たち人間です。

外来種“アカミミガメ“の脅威

 1960年代に大手菓子メーカーが景品用に、アメリカ南部からアカミミガメを輸入。それ以来、80〜90年代にかけて100万頭近くが毎年輸入されていました。ほとんどのアメリカ人はこの事実を知りません。ペットとして飼えなくなり野に放たれた、繁殖力の強いアカミミガメが激増し、イシガメやクサガメは激減。生物の多様性が損なわれる危機を招いています。

 国際自然保護連合や日本生態学会はアカミミガメを「ワースト100外来種」に指定していますが、環境省は「要注意外来生物」に留め、法規制のある「特定外来生物」には指定していません。特定外来生物法は、“指定生物を遺棄することは犯罪行為である“とうたっています。生物多様性を修復するためにはアカミミガメを特定外来生物に指定し、ペットを捨てることのないよう啓蒙していくことが大切です。

 すでにアカミミガメの輸入を禁止している国もあります。日本もアメリカへの過度な気遣いをやめ、経済産業省と環境省とが連携し輸入規制に舵を切るべきではないかと考えます。

生き物と、どう暮らしていくか

 昔みたいに地元で捕った生き物を地元で飼育するのが一番理想的。飽きたらすぐ放すことができる。逃げても生物多様性の損失や遺伝子のかく乱にはならない。それ以外で飼うというのなら、飼えなくなった時に殺すことも含め最後まで管理できるかどうかを考えて。飼えなくなったら捨てるというのは、無責任な上に犯罪です。

 ゲームセンターなどでアカミミガメや淡水フグなどが景品となっているゲームを見かけますが、生き物を扱う視点で好ましいとは思えません。

日本のカメたちの惨状を、世界へ

 COP10では、生物多様性が損なわれている日本で、カメも危機に陥っていることをアピールしたい。ものづくりが盛んな中部地区ですが、生物多様性の発信地としても発展させていく活動をしていきたいと思います。

中日新聞朝刊 平成22年4月10日付掲載

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