インタビュー

アサヒビール株式会社名古屋工場長 西川 隆文さん

モノづくりのマイスターたちが地球を想い、実践する

クロメダカが見られる工場内の「メダカの池」

工場の池には、絶滅危惧種のクロメダカ

 工場内の池で、絶滅が危惧されているクロメダカを飼っています。通常メダカは藻や水草の根元に卵を産みつけるのですが、近年では河川がコンクリート壁になって産卵場所がなくなってきています。また、ブルーギルなどの外来種に捕食される悲劇も起こっています。近隣の小学生の授業の一環として、このクロメダカの生態観察を行う「メダカ教室」を東山動植物園の協力を得て行ってきました。今年から東海三県の親子に対象を広げて開催しています。子どもたちが卵を観察しその一生を知ることで、自然保護に関心を持ってもらえればと願っています。この「メダカの池」のある庭では太陽光パネル設置の工事も進めています。

水の尊さ学ぶ出前講座

 また、ある小学校では工場排水がどんなふうに浄化されていくかのプロセスを学習する出前講座を行いました。実際に工場で出た排水を処理前、処理途中、処理後で試薬を使って観察。たとえば試薬にアンモニアが入ると排水は赤く染まり、色の違いで水の汚れ具合がわかります。アンモニアがバクテリアに食べられて今度は亜硝酸態窒素が増えていき、また亜硝酸態窒素が分解されて硝酸態窒素になっていくという浄化の過程を色の変化で見せると、皆、興味津々で、水を通して自然環境の大切さをアピールできました。

サークル描く、環境への取り組み

 事業活動においても、環境保護に努めています。ここ名古屋工場では、オゾン層を破壊し地球温暖化の原因となるフロンガス使用の全廃を、全国に先駆けて実施しました。また、缶、ビンなどの製品の完全再資源化も実現しています。

 工場排水に関しては排水処理をし、浄化して矢田川に放流しています。メタン菌を使って処理を行う過程でメタンガスを生成し、ボイラー運転に利用するなどして熱や電力エネルギーの使用量を削減しています。またボイラーの熱源には、重油と較べCO2の発生が少ない都市ガスを使用しています。排水の汚泥は堆肥化し、その多くは静岡県のお茶やソバの土壌肥料として活用されています。汚泥といってもほとんどがリンやチッソなどの養分を含む微生物の死骸で、麦芽が原料なので栄養価が高いのです。

頼もしい、匠(たくみ)たちの奮闘ぶり

 一方で社員からも、省エネ策や業務改善案が折々に提案されます。この背景には、作業工程全般を熟知するテクニカルマスターや、一工程に精通するテクニカルエキスパートといった匠を認定する『マイスター制度』、そして自分の学びたい匠の下で教えを受けられる『弟子入り制度』など、モノづくりに対する当社の教育システムや社員の情熱があります。なにより、日々の作業を行う上で仕事の精度をあげることが、資源の無駄を減らし、結果的に地球環境への貢献につながると思っています。

官民連携で行う、水源地を守る森づくり

 社員の力で実を結びつつあるのが、木曽川の水源地を保全する目的で始めた岐阜県御嵩町での森づくり活動です。県と同町、NPOと当工場の連携で、年2回、これまでに8回実施しました。苗植え、間伐作業、切った木を運び出すための林道作りもしています。当工場からは毎回30人前後が自発的に参加。雑木林だったところに道や階段ができると皆、感激します。また家庭でも、CO2排出量の抑制につながる『環境家計簿』をつけよう、という呼びかけに応じる社員が増えています。

メダカの生態を学ぶ「メダカ教室」を開催している

自然の恵みに感謝

 日本政府が1990年比で2020年までに、CO2排出量の25%削減を宣言しました。当工場では昨年末で、 1990年比26.3%の削減となっています。ビールの原料となる麦やホップは天然資源。自然の恵みのおかげでビール作りができるのです。ですから、自然資源や水資源保護の活動を続けていくことは、ビール会社の責務だと思っています。

中日新聞朝刊 平成21年12月10日付掲載

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