インタビュー

環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室長 鳥居 敏男さん 前職は環境省自然環境局生物多様性センター長。地球温暖化などによる生き物
への影響に気づいてもらうための市民参加のプロジェクト、「いきものみっけ」は子どもたちを中心に広がりをみせている。自然の中に浸れる登山が趣味。

 自分のまわりのいのちに、気づくことからはじめよう

「いきものみっけ」で生き物を身近に感じてもらいたい

 「生き物に対する関心が薄れているんじゃないか」という問題意識が発端でした。「生物多様性とはなんぞや?」ということは置いといて、まずは生き物を身近に感じ、気づいてもらうことからはじめようと考えました。

 そこで昨年7月から来年の8月末までの期間、見つけた生き物の名前・日付・場所などを、ホームページ上や「みっけシート」に書き込んで送ってもらい、「いきもの地図」を作ることにしたのです。

 春にはタンポポの花やわたげ、モンシロチョウなど。夏にはカブトムシ、クマゼミやアブラゼミの鳴き声など。秋にはヒガンバナの花、イチョウの実、ナナカマドの紅葉。冬にはジョウビタキ、ヒキガエルの卵を調査対象としています。

虫の分布の異変から分かる、地球温暖化の影響

 ナガサキアゲハという蝶は、分布の北上が確認されていますが、温暖化の影響といわれています。

 また、西日本に分布していたクマゼミは、近年では関東南部でも確認されるようになり、去年は新潟や山形からも報告がありました。そのため今年の調査では北陸地方や関東北部にお住まいの方には、特にクマゼミの鳴き声に注意してくださいとお願いしています。

 たとえばセミをずっと観察していると、つい「今日はなんで鳴かないんだ?」というような疑問を感じるようになります。疑問をもつと、その理由を知りたくなる。そうすると、生き物に関する新聞の記事にも自然に目がとまるようになります。そういう感覚を磨いていただけたらうれしいですね。

新宿御苑で行われた「みっけ観察会」

子供から大人まで多くの人に参加してほしい

 小中学校の先生や地域の子供会などから、対象となる生き物の特徴や見つけ方などが載っている「いきものみっけ手帖」(無料)を送ってほしいという依頼を数多くいただいています。また全国の農業高校でも生き物調査が行われているのですが、タイアップしてくれることになりました。

 実は、1984年に「身近な生きもの調査」を既に実施しています。その時は、参加者へ地形図を送り、見つけた場所を報告してもらう郵送方式のみでしたが、約10万人の参加がありました。当時、役所が市民参加の形をとることは、非常に画期的でしたね。

 今回は、身近な生き物の存在やその変化に気づいてもらうことに力点を置きました。人の活動が身近な生き物にどういう影響を与えているのか、大多数の人は見過ごしています。人が知らないうちに、ある種の生き物はそこからいなくなっているのです。

 この「いきものみっけ」の結果は、来年の10月に愛知・名古屋で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)のサイドイベントで発表したいと考えています。

生物多様性を保全することの大切さ

 日本はヨーロッパなどに較べると生物の種類はかなり多く、中でも固有種が多いのが特徴です。生物多様性の宝庫だった日本が、現在では、丸ごと生物多様性のホットスポット(生物の多様性が豊かであるにもかかわらず、危機に瀕している場所)になってしまっています。

 生態系の人為的なかく乱は、環境の変化に耐えられない生物の消滅につながる危険をはらんでいます。地球温暖化や人為的かく乱によって、生物の分布や繁殖・冬眠・渡りといった生活のサイクルが乱されていますが、このことはやがて、病気や食料問題といった形で、人間にもしっぺ返しとなるおそれがあります。取り返しがつかなくなる前に、生物多様性の保全といった予防的なことを今のうちにやっておくことが大切なのです。

中日新聞朝刊 平成21年7月10日付掲載

ホームページ:いきものみっけ

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