インタビュー

環境教育家 高野 孝子さん 新潟県出身。1992年に「人と自然と異文化」をテーマに環境教育活動を行なう「エコクラブ」を創設。現在は他の活動を統合したNPO「エコプラス」の代表理事。ヤップ島やアラスカでの先住民との交流の他、日本の農村での農業体験など、理論と実践を活かした幅広いプログラムを展開中。著作に「ホワイトアウトの世界で」「野外で変わる子どもたち」など。

異文化体験の中で気づく 大地とつながることの大切さ

エコクラブ設立の原点

 20代のころの「オペレーション・ローリー」との出逢いが大きいですね。若者が、3ヵ月くらいかけて外国の人たちと大自然の中などで共同生活をするという冒険旅行です。自分は新潟の田舎に生まれて育って来たけれど、自然について何も知らなかったのだという、とても強烈な印象を受けました。

 例えばジャングルで雨水をすくって飲んだり、滝つぼでシャワーを浴びたりすると、「私たちがふだん使っている水も、元は雨」と気づきます。知識として知るのと、体験を通じて知るのとでは全然違うということを、身をもって感じました。おたまじゃくしやヒルという生きものも、自然の中では人間と何ら変わらない位置づけだと気づいたのです。

 そんな体験が原点になって、自然や異文化の中で体験から学ぶ「エコクラブ」を始めました。

ヤップの島民と交流するプログラムの参加者たち

本当に大切なもの

 日本の若者はヤップ島に行くと、携帯がなくても平気で過ごせるということに気づいて驚きます。経験を積めば積むほど、自分は自分という自信を持てるようになればなるほど、自分にどうしても必要な物が減っていくのです。

 帰国後、振り返りをしていると、「変化したこと」の報告として参加者に共通しているのが「モノを買わなくなった」「ニュースをよく読むようになった」「国際報道が他人事じゃなくなった」などです。

 あとは、「おじいちゃん、おばあちゃんと話すようになった」とか。今ある自分が何故いるのかということを考えると、先代達の存在とか、家族の大切さとか、そういうことに気づくのですね。本当に大事なものは何かを、見つけたのかもしれません。

エコクラブの環境教育

 生き方そのものであり、今の時代の人類の運命さえ握っている分野だと思っています。平和とか、開発とか、全部含めて考えなくてはいけないことですから。ヤップ島に行くのも自然を体験するだけではなくて、自分の生きる社会をデザインする素材を集めてこようと行くわけです。

 特に日本では、6割は他の国から持ってきたものを食べているわけですから、それを作るために使った水のことも考えたら、日本じゃない所にものすごく依存して成立している。そういうことを考えたら、「地球の視野を持って社会をデザインしていかなければ」「どこも切り離せないし、自分たちのことだけを考えていたらいけない」ということが分かります。

 また、活動には必ず多様性を入れることにしています。男と女、日本人と外国人、身体機能の違いとかね。旅行で現地に出向くことはもちろん大切だけれど、人と人との関係という点からみると本当はどうなのかというところまで考える必要があると思います。

 対等に、公正に。本当に他人の目線にたてる人を育てていかなくてはならない。旅行のパッケージを作る人も、現地の文化とか歴史を知らせる、インフォームド・ツーリストという、教養ある旅行人を育てることをきちんとやっていかないといけないでしょう。そうでないと、環境も壊れるし、人間関係も壊れていってしまう。

大地とつながる大切さ

 世界に出ると、常に「あなたは何者なの」という問いを突き付けられます。それは自分というものをきちんと持っているか、ということ。ちゃんと鍋で米が炊けるとか、太鼓をたたけるとか、何でも自分の根っこになるようなことを出来る人の方が国際社会では尊敬されます。何でもいいんですよね。大地につながっているということ。その人がそれで落ち着けるものを持っているということが大切なのだと思います。

中日新聞朝刊 平成21年5月10日付掲載

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