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COP10が愛知・名古屋に残したもの(前半)

 先月開催された愛知県名古屋市での生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、外務省の発表によると179の締約国の代表と13,000人以上が参加する、史上最大の生物多様性のCOPとなった。関係者・ボランティアの皆様、本当にお疲れさまでした。

 今回、喜ばしいことに愛知・名古屋の名前がついた数多くの成果が生み出された。具体的には、「名古屋・クアラルンプール補足議定書」、「2010年以降の愛知ターゲット」、遺伝資源へのアクセスと利益配分についての「名古屋議定書」が誕生した。特に、名古屋議定書をめぐっては、発展途上国と先進国の折り合いがなかなかつかず、10月30日の未明、名古屋議定書の交渉が議長提案の採択という劇的な幕切れで終焉した。いままで様々な国連の交渉や会議をみてきたが、議長による提案が最終日になされて、それが無事に成立したという出来事は初めてだった。  

 今回は、その議定書の中身について、簡単に解説しておこう。今回採択された二つの議定書について、一つは、「(責任と救済に関する)名古屋・クアラルンプール補足議定書」という、カルタヘナ議定書の追加的な議定書である。これは、遺伝子組換え生物の国境を越える移動から生物多様性に損害を与えた場合の責任とその賠償に関する取り決めを定めるものとなる。遺伝子組換えの飼料や農作物を国際的な貿易で取引して、何か生態系に悪影響を及ぼすようなことが出た場合の備えの仕組みづくりが進んだ。

 次に2010年以降の愛知ターゲットは、主に2020年(一部2015年や2050年の長期目標もあり)に向けて、生態系の保全を中心とした目標となっている。陸地については17%、海域については10%を保全していくことなどを定めた。生物多様性関連の資金援助についても増量していくことを約束したが、具体的な数値目標などは取り下げられている。ただし、資金援助についての数値目標が事務局の原案に入っていたことからも分かるように、発展途上国を中心として、資金・技術の援助についての要望は、会議の間も繰り返し出されていた。

 もう一つの名古屋議定書、「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する名古屋議定書」とは、遺伝資源を利用した研究開発やその利益を遺伝資源の提供者と利用者の間で公正かつ衡平に配分することの規則を定めたもの。争点となった分野である加工品や遺伝資源の利用の監視機関が含まれ、ある程度、先進国にとって受け入れ可能な内容となっている。ただし、途上国にも配慮して、技術移転や能力開発の他、グローバルな利益配分メカニズムと、日本は具体的な金額を拠出していくことも約束した。

 今後は、日本は約束を果たしながら、2012年の10月にインドで次回のCOP11が開催されるまで議長国として今後の二年間、活動していくこととなる。

 COP10支援実行委員会アドバイザー 名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授 香坂 玲

 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)公式ウェブサイト


著者プロフィール

香坂 玲(こうさか・りょう)

静岡県生まれ。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルク大学の環境森林学部で博士号取得。2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局の勤務を経て、4月より現職の名古屋市立大学大学院経済学研究科の准教授(林業経済、環境政策論)。COP10支援実行委員会アドバイザー。国連大学高等研究所客員研究員を兼務し、里山の評価などに参画。

著書『いのちのつながり よく分かる生物多様性』<中日新聞社刊>発売中。

2016 愛知環境賞

第75回 中日農業賞

地球のいのち、つないでいこう

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