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東山動植物園から考える生物多様性

 展示と娯楽の他に、一般に動物園の役割としては、環境教育、種の保全、調査研究の活動が挙げられます。動物園のなかでは、さまざまな動物を観察できる他に、図書館の施設や、パネルを通じてその動物の生態や生息域について知ることができます。

  数値でみると、平成20年の入園者数では、上野動物園(約289.8万人)、旭山動物園(約276.9万人)に続いて、東山動植物園は約220.1万人で3位となっています。「行動展示」で知られる旭山動物園がブームとなる前は、長らく東山動物園が入園者数では2位でした。

 東山動植物園というと、最近はサルが逃げ出すというハプニングがあり、脚光を浴びました。周りの里山のような森は普段は豊かな環境を提供してくれますが、サルが逃走中の探索時はそれが逆に災いして野生のサルを捕らえるような大変さでした。サルにしてみると、ひと時の生の自然のなかでの冒険だったのでしょうか。

 さて、動物と展示の問題をめぐっては、人と動物をめぐる倫理的な問題も焦点となります。例えば、「動物のありのままの姿を見たい」という願望は、早朝か夜しか野生動物が見えなくなることを意味することもあります。アフリカのサファリなどでも、動物が実際に動いていてよく見える時間帯は限られていることは有名な話です。

 展示では動物が見えることが自明のようですが、「そもそも動物は見えたほうがいいのか」、あるいは「見えなくても、動物の福祉(ウェルフェア)を重視したほうがいいのか」という問題があります。現に欧州の動物園のなかには、自然に近い動物の生息環境を実現した結果、ほとんど動物が見えないという動物園が存在します。

 動物の自然さや幸せを優先して、来場する子供が忍耐強く待ったり、あるいは動物が見られなくて少しがっかりすることも環境学習の一環なのか。それとも、動物園は娯楽の要素が大事なのか。なかなか難しい問いかけですが、娯楽だけではなく、生物多様性やいのちの尊さを学べるという意味で、動物園は貴重な場所です。

 東山動植物園に今後どのような役割が期待されているのかを考える公開シンポジウム「ひがしやま動植物園の新しい役割を考える〜ニーズのギャップを探る〜」が今月11日(金)、名古屋市立大学滝子(山の畑)キャンパスにて開催されます。来年10月のCOP10開催に先立ち、専門家、また市民の立場から「動植物園のあるべき姿」を議論します。

※応募受付は終了いたしました。

 COP10支援実行委員会アドバイザー 名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授 香坂 玲

 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)公式ウェブサイト


著者プロフィール

香坂 玲(こうさか・りょう)

静岡県生まれ。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルク大学の環境森林学部で博士号取得。2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局の勤務を経て、4月より現職の名古屋市立大学大学院経済学研究科の准教授(林業経済、環境政策論)。COP10支援実行委員会アドバイザー。国連大学高等研究所客員研究員を兼務し、里山の評価などに参画。

著書『いのちのつながり よく分かる生物多様性』<中日新聞社刊>発売中。

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