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「生物多様性」なんとも難しい響きですが・・・。

 2010年の10月に愛知県名古屋市で第10回目にあたる生物多様性条約の締約国会議(COP)が開催されることが決定しています。「生物多様性」という言葉自体は、まだまだ馴染みがないのが現実です。分かりづらくて、固い響き。でも、実は非常に身近な存在です。私たちの衣食住や遊び、学びなどの場面で常に接しているものだからです。例えば、バードウォッチング、スキューバダイビング、秋の紅葉狩りなどの趣味の多くは多様性そのものを嗜む活動です。食卓を見渡しても、栄養をバランスよく取るためには、さまざまな食材は欠かせませんし、栄養だけではなく、食卓が色とりどりに飾られる光景は、豊かさを実感させてくれる重要な要素です。その他にも津波、集中豪雨、温暖化、害虫の大量発生など、急激な変化がある時も、森などの生態系が保たれていれば、水を吸収したり害虫の発生を制御したりと、生物多様性はそのショックを和らげてくれるという役割を果たしてくれます。

 ただ、その固い響きからも想像できるように、「生物多様性」という言葉、まだまだ知られていないことがわかっています。2004年に環境省が実施したアンケートでは、「自然環境に関心がある」と回答した人が8割近くに達したのに対して、「生物多様性」という言葉を知っている人は約1割、聞いたことのある人を含めても3割程度という結果でした(環境省,2004)。2008年度の市政アンケートにおいても「生物多様性」という言葉を知っている人は約6割、その意味まで知っている人は全体で約2割という類似した結果が出ています(名古屋市,2008)。「2010年までに半数の市民が意味まで知っている」という環境省の目標にはまだまだ道半ばで、啓発普及の活動が必要となりそうです。企業にしても生物多様性の重要性を認めつつも、「自分たちの事業との関連性が低い」と回答した企業が2006年の調査で7割以上に達しました(環境省,2006)。地方自治体はどうでしょうか。戦略や方針などを策定しているかどうか、それを行っているかどうかを荒い目安にしても、都道府県では千葉や埼玉など5県程度、政令指定都市ではもっと数は少なくなっています。

 一般の方々も、企業の方も、地域の行政の方々もまだまだこれからです。ただ、裏を返せば、生物多様性という言葉を聞いたことがなくとも、趣味、生活、動物園、植物園、水族館など、さまざまな動物や植物を家族で楽しみ、訪問していることでしょう。いちいち実感はしていないものの、実はちゃっかり、生態系や生物から得られた恵みとして、食べ物、衣服などの商品やサービスを享受しているのが実情だということも覚えておきたいことです。

 私たちの生活の基盤であるその生物多様性が、いま危機に瀕しているのです。

 次回は、国際社会による生物多様性への取り組みである、生物多様性条約の紹介と愛知県名古屋市で開催されることが決定している第10回目の生物多様性条約の締約国会議(COP)とその意義について解説します。

 COP10支援実行委員会アドバイザー 名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授 香坂 玲

 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)公式ウェブサイト

環境省(2004)/新・生物多様性国家戦略の実施状況の点検結果(第2回).環境省,東京
環境省(2006)/環境にやさしい企業行動調査.環境省,東京
名古屋市(2008)/市政アンケート 平成20年度 生物多様性とCOP10について

参照URL:http://www.city.nagoya.jp/shisei/koho/monitor/


著者プロフィール

香坂 玲(こうさか・りょう)

静岡県生まれ。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルク大学の環境森林学部で博士号取得。2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局の勤務を経て、4月より現職の名古屋市立大学大学院経済学研究科の准教授(林業経済、環境政策論)。COP10支援実行委員会アドバイザー。国連大学高等研究所客員研究員を兼務し、里山の評価などに参画。

著書『いのちのつながり よく分かる生物多様性』<中日新聞社刊>発売中。

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