エコらむ

【いろんないきものの話 五箇公一】

ビロードダニの年賀状

2013年02月15日

 大変遅くなりましたが、みなさま明けましておめでとう御座います。今年も宜しくお願い致します。ということで、今回は、2013年の年賀状を公開致します。絵柄はインド産ビロードダニ。この連載コラムでも紹介したことのある「アカケダニ」のオス・メスのペアです。

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        この正月にみなさんにお送りした年賀状のデザイン。

 実は、アカケダニという種名は、日本産のダニに付いており、インド産のでかい種には和名が付いておらず、混乱するので気をつけた方がいい、とダニ研究仲間にご指摘頂いたので、ここではこのインド産のダニは、英名のベルベット・マイトから引用して「ビロードダニ」と呼ぶことにする。

 このダニは、日本ではペットとしても売り出されており、密かにブームとなっている(⇒マイ・ブームに過ぎない?)。昨年夏にダニ研究仲間が飼育していると知って、速攻、分けてくれるようお願いした。そして7月に、遂に我が研究室にもビロードダニが届いた!ビニールカップに入った状態で届いた瞬間に開けてみると、体長が1〜1.2センチほどの、真っ赤な毛に覆われたメスのダニが3匹、モゾモゾと蠢(うごめ)いていた。「か、かわいぃ・・!」と思わず、感動・・そんな筆者の様子をみて、研究室ののスタッフたちが寄ってきて、ダニを見るなり、ぎょっとして、言葉を失った・・(筆者としては、その愛らしさに言葉を失ったもと考えているが、真意は定かではない)。

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                             ビロードダニの実物3匹。手前の一番大きい個体がA子ちゃん。
                        奥手の2匹がB子ちゃんとC子ちゃん。


 そして、クワガタの飼育用マットを敷いた飼育ケースの中に移して飼育開始。3匹ともメスなのでA子ちゃん、B子ちゃん、C子ちゃんと名付け、3匹一緒に仲良く同じ飼育ケースで暮らさせた。その日から、3匹のビロードダニが、我が研究室のマスコットとなった、のだが・・動かない!届いたばかりの時は、モゾモゾと動いていたのに、いつ飼育ケースを覗いても、3匹とも身動き一つしない。手のひらに乗せても、手足をのばしてころんと転がってるだけ・・弱っているのか、と心配になるが、毛並みも良く、身体もふっくらしてるので、特に衰弱しているようにはみられない。ちなみに餌は、昆虫の死体らしい、ということで、ハチやコオロギの冷凍標本を解凍して与えていたが、食べているところは、一度も観察したことがない。見た目は可愛いのだが、何の動作もない、ずいぶんと退屈なペットだ・・と思っていた。

 その後、研究室のスタッフが、夜に飼育室を覗いたら、ダニがガシガシ歩いているのを目撃した、とか、ダニ研究仲間から、乾燥させると元気よく動き出すらしい、との情報が寄せられ、どうやらこのダニは、必要なときにしか動かず、それ以外は「静止モード」で、エネルギー消費を抑えているのだと推測された。そして、大変な悲劇が飼育ケースの中で起こることとなる。
 ある日、飼育ケースを覗いてみると、1匹のビロードダニ(恐らく一番でかかったA子ちゃん・・)しか見当たらず、他の2匹の姿がない・・しかも、残ったA子ちゃんはやたらと身体がふくれて、いわゆる満腹状態に見える・・ということは、共食い!?どうやらB子ちゃんとC子ちゃんは、A子ちゃんの犠牲になってしまったらしい。。これには相当驚かされた。普段はゴロゴロしてるだけで、動物のナマケモノなみに動きが乏しいダニなのに、実は獰猛なプレデターだったとは!!

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                                知人が作ってくれたフェルト製ビロードダニ・マスコット

 結局、ダニのマスコットはA子ちゃん1匹だけとなってしまった。それでもこの残った1匹はテレビやラジオにも出演して、ゲストのタレントさんにも大人気で、大活躍してくれた。また、筆者のダニ愛に共感してくれた知り合いのフェルト作家さんが、ビロードダニのブローチを作って筆者にプレゼントして下さった。そんな、皆さんにも愛されたビロードダニを1年の締めくくりとしてCGに描き上げ、年賀状の絵柄にした。受け取った皆様からは絶賛の声を多数頂くことが出来た(「気持ち悪い!」の声もこの際、愛情表現と受け止めた。。)。 

 ダニで2012年を締めくくり、ダニで始まる2013年。今年もダニの深淵と生物多様性の妙を追求する1年としたい。皆様方にも、今年もお付き合い頂けたら幸いです。

プロフィール

五箇公一(ごか・こういち):国立環境研究所 主席研究員

1965年富山県生まれ。1988年京都大学農学部卒業、1990年京都大学大学院昆虫学専攻修士課程修了、1990年宇部興産株式会社農薬研究部、1996年京都大学博士号(論文博士)取得(農学)1996年国立環境研究所、現在に至る。主な著書に『クワガタムシが語る生物多様性』、『リスク学事典』(共著)、『ダニの生物学』(共著)、『外来種ハンドブック』(共著)、『生態学からみた野生生物の保護と法律』(共著)、『環境科学 人間と地球の調和をめざして』(共著)、『生態学入門』(共著)、『いきものがたり』(共著)など。専門はダニ学、生態学、集団遺伝学。

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