エコらむ

【いろんないきものの話 五箇公一】

「祭りの後・・・」 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に参加して

2010年12月06日

 10月18日から2週間にわたって、名古屋市国際会議場において生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催された。この国際会議では、生物多様性条約に加盟した190カ国以上が参列して、生物多様性を守るための国際的取り組みに関する議論が交わされた。すでに多くの新聞やTVでもその模様が報道されたので、ご存じの方も少なくないと思う。筆者も、前半の1週間、本会議に参加して外来種対策に関するサイドイベントを環境省と共同で開催した。

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        盛大なオープニングパーティ。数千人が参加した。
               遠くのステージでスピーチするのは環境大臣・・らしい。

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      COP10本会議場。発言者は大スクリーンに映し出される。6カ国語同時通訳。

 

 サイドイベントとは、本会議の合間に、会場の中あるいは周辺にある様々なスペースで、NGOや企業や研究者グループが自主的に開催するイベントの ことである。我々は10月20日と21日の2日間にわたって、会場内で我が国における外来生物対策に関する政策者向けのシンポジウム「食べて考えよう!外来種問題」を開催し、さらに23日の土曜日に会場外に隣接して設けられた交流フェア会場にて、一般向けの公開シンポジウム「見て、聞いて、考えよう!外来 種問題」を開催した。

 まず、20日と21日は、環境省担当官と研究者たちが列席し、日本の外来生物法の仕組みや、法に基づいて実施され ている外来生物防除の実態について、様々な国の参加者に向けて説明した。この際、タイトルの「食べて考えよう」の通り、琵琶湖に定着した外来魚オオクチバ スから作られた「オオクチバス・バーガー」を100食、日ごとに用意して来場者に配布して、試食していただいた。もともとオオクチバスは食用目的で導入さ れた北米原産の外来魚である。それが今は食べられずに、スポーツフィッシングを楽しむためだけに、日本各地に密放流されて問題となっている。実際に食べて もらって、外来魚の本来の利用目的を知ってもらい、それが今や有害な「特定外来生物」として問題視されている現実を知ってもらうことが目的であった。

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  サイドイベント「食べて考えよう!外来種問題」会場前で陳列されたバス・バーガー

     大勢のマスコミが取材に殺到した。

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             サイドイベント会場内での外来生物法の説明。

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              説明を食い入るように聞く聴衆たち(バーガー食後)。

  このバスバーガーは予想以上に好評で、筆者も実際に食べてみたが、普通の白身魚のフライよりさっぱりしていて、確かにおいしかった。食べ物に「釣られた」 という表現は良くないかもしれないが、おかげで来場者は、両日とも100名を超える盛況な会となった。実際のシンポジウムの中身では、日本の外来生物対策の具体的事例の紹介を様々な国から来た参加者が熱心に聞き、質疑応答も大変活発で、外来種問題は、先進国、途上国に関わらず深刻な環境問題となっているこ とが浮き彫りとなった。

 23日は、会場の外にある交流フェアと呼ばれる様々な団体がブース展示をしているエリアで、政府専用テントにお いて、「マングース物語」という紙芝居を上演した。マングースは、毒蛇のハブ退治目的で南アジアから沖縄・奄美に導入された動物である。結局、沖縄・奄美 の島で増えることに成功はしたけれどもハブ退治にはあまり役に立たずに、島の貴重な固有種であるヤンバルクイナやアマミノクロウサギを捕食してそれらの数を減らしていることが判明して、環境省の法律で「特定外来生物」に指定され、駆除されているという悲しい現実を紹介した。紙芝居上演前には、当研究室のスタッフがヤンバルクイナの着ぐるみを着たり拍子木を打ったりしてお客さんを集めるのに奔走した。その甲斐あってか、130名の来場者を迎え、立ち見が出る ほど盛況な催し物となった。

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  紙芝居「マングースものがたり」上演前にフェア会場で宣伝に練り歩いた
  ヤンバルクイナの「クイちゃん」。外国からのお客さんにも大人気。

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             紙芝居上演。立ち見が出るほどのにぎわいであった。

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                 紙芝居では筆者はハブの声担当・・・

  紙芝居上演後は、専門家たちが壇上に並んで、会場から質問を受け付けるというコーナーを設けた。ここでもまた熱心な来場者たちから多数の質問がでたのだ が、それ以上に熱心な6人の専門家たち(筆者も含む)がひとつひとつの質問に対して、マイクを奪い合って全員が答える(意見をいう?)という、ちょっと質問者が引いてしまうくらい迫力のあるコーナーとなってしまった。

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   たくさんの展示ブースが並んだ交流フェア会場。多くのお客さんが生物多様性の
   大切さを学びに来て下さった。ただ、閉会後、大量のゴミがここに残った・・・

 

プロフィール

五箇公一(ごか・こういち):国立環境研究所 主席研究員

1965年富山県生まれ。1988年京都大学農学部卒業、1990年京都大学大学院昆虫学専攻修士課程修了、1990年宇部興産株式会社農薬研究部、1996年京都大学博士号(論文博士)取得(農学)1996年国立環境研究所、現在に至る。主な著書に『クワガタムシが語る生物多様性』、『リスク学事典』(共著)、『ダニの生物学』(共著)、『外来種ハンドブック』(共著)、『生態学からみた野生生物の保護と法律』(共著)、『環境科学 人間と地球の調和をめざして』(共著)、『生態学入門』(共著)、『いきものがたり』(共著)など。専門はダニ学、生態学、集団遺伝学。

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