エコらむ

【クリチバの奇跡に学ぶ 中村ひとし】

アスファルト道路を公園に

2009年11月11日

 人を大切にするまちづくりを基本とするクリチバ市の紹介で、道路公園について少し触れましたが、ここでもう少し説明を加えたいと思います。

 日本での一般的常識では、アスファルト道路の道幅を広げることはあっても、逆に狭くすることはあり得ません。あるいは四つ角の真ん中に公園を造って、道路を通り抜け出来なくすることもあり得ません。しかし、クリチバ市では、自動車よりもひとということが、計画者、市民の意識の中に生きており、時と場合によっては、道路を公園にして住民の要求に答えることがあります。

 もちろん、決定には多くの調査、分析を必要とします。 しかし、ここで大切なのは住民の環境への意識で、前回紹介したように、市民への環境教育の結果が、ひとを大切にするまちづくりの実現を可能にしていると思います。特に小学校での環境教育は、もう始まってから19年にもなり、子供が親の環境意識を変えていくということも相まって、くるまに支配されない、ひとを大切にするまちづくりが、一般的な都市市民の意識になってきました。

さらに加えて、みち(道)に対する基本的な考え方も、本来は人が歩くため、あるいはそこで人と人が出会って、あいさつをしたり、話をするための場所であったのが、車の出現で、いつのまにか、車のための場所に変わってしまったことも、学びます。
そしてそこで、人と車が共生、共存する方法もあることを学び、最終的には、街がいつのまにか車に支配されたものになっているのではなく、人が車を上手に使うことによって、より良いまちづくり、人を大切にするまちづくくりができることを学校で学びます
そして、計画者、建設者(多くは行政)は、実際に共生が本当により良いものであることを実現し、証明しなければいけません。でないと市民はついてきません。
さて、このアスファルト道路を公園にする、クリチバ市での4つのケースについて、それぞれご説明します。
 
1.道路幅を狭くして歩道を公園化douro1.jpg
 
 住宅地区内の道路幅が広くスピードが出しやすい道路が、車が多く集まる通過道路になるのを防ぐため、幅を狭くして一般住宅道路にして、住民のための道路にします。例えば、この写真にある道路は、9月7日通りで、40年前の都市計画では、幹線道路で、アスファルト幅30mの道路でしたが、公共交通計画と土地利用計画の変更で、住宅地区の道路になりました。しかし、幅が30mもあるので、多くの車が集中し、いわゆる通過道路になり、全く住民と関係のない道路でした。
そこで、巾を10m狭くし、住民が使えるジョッキングコースをつくり、ベンチを所々に置いて、庭園的な歩道にして、住民のための道路にしました。(全長2.2km)
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2.全道路をレクリエーション施設のある公園化   

 
 住宅地区にある商業施設のない道路を、家屋へのアクセスを残して全道路を公園化したケースもあります。アクセス道路は、幅4m、制限速度は時速20kmで、ゴミ収集車、郵便、その他生活に必要な車は通れます。こうした道路公園は、周辺に公園もなく、子供が多い地区に計画されます。写真の道路公園は、全長1.2kmにわたって施工されました。
もちろん通過(通り抜け)の車はなく、通るのは住民の車、ゴミ収集車などだけで、車と公園が共生できている例です。家の前が公園という、住民をとても大切にした計画です。
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3.幹線道路の中央分離帯を公園化   

 
周辺に緑地がなく、住宅地区に近いところを通過する幅の広い二次的幹線道路では、中央分離帯が公園化されました。車線を増やすのではなく、逆に、分離帯の幅を広げ、バスケット、バレー、サッカー、テニスなどができる運動公園的な性格をもった公園にしました。全くの動的な公園で、両側を走る車線もあまり気になりません。もちろん 多くの樹木で公園全体が包まれるようにしました。
 
4.四つ角を公園化
 douro4.jpg
 住宅地区の、幹線道路に繋がっていない道路の四つ角の全面積を公園化し、児童公園にして、お母さん方、あるいはお年寄りのおしゃべりの場にもしました。
これで通り抜けの車は全くなくなり、住民、特に子供、年寄りには安全な道になりました。もちろんこの計画場所は永久的なものではなく、必要に応じて普通道路にもどすことができます。
 
以上いくつかの道路公園の例をあげましたが、これは、やはりクリチバ市の花通りの実現から始まった、人を大切にするまちづくり―都市の主人公はひとである―からくるもので、その一部になっていると思います。みち―道路も主人公はひとで、人とひととの出会いの場所、あいさつの場所でした。
皆様も、車に支配されず、逆に車を上手に使うよう気をつけて、良いまちづくりに参加して下さい。
 

プロフィール

中村矗(なかむら・ひとし) : ブラジル・クリチバ市 元環境局長

1970年農業移住者として、両親の反対を押し切って、ブラジルへ渡る。その後、クリチバ市長だったジャイメ・レルネル氏に認められ、1989年にクリチバ市環境局長に、1995年には、パラナ州環境局長に抜擢され、その間、ジャイメ氏と人間都市クリチバの都市づくりに参加、様々なプロジェクトを発表し、クリチバ市を環境都市として世界的に有名にする。

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