エコらむ

【クリチバの奇跡に学ぶ 中村ひとし】

ゴミ問題は環境教育プログラムで解決

2009年09月10日

 クリチバ市を訪れる人は、まず第一に、その街のきれいでゴミのないことに驚かされます。南米の発展途上国の地方都市、クリチバが、なぜそのようなきれいな都市になったのか? それは、一口で言うと、市民意識の改革でしょう。

 都市のゴミの問題は、どの国においても、頭の痛い問題です。なかなか解決策もなく、ゴミは増える一方で、その処理に、先端技術を駆使し、より有効な焼却炉を建設するのが精一杯で、市民の意識改革には、なかなか手が出せないのが現状でしょう。
 しかし、クリチバ市は、ゴミ処理は、埋立地方式で、先端技術の焼却炉はなく、また分別収集機もなく、再生可能ゴミの仕分けは、各家庭がします。即ち、家族全員が、再生可能ゴミが何であるかを知っているのです。そして、週2日、普通ゴミ収集日と違う日に、市の特別収集トラックが各家庭を回って、再生可能ゴミだけを収集していきます。これによって、普通ゴミと再生可能ゴミが混ざり合うことがなく、今の段階では、再生可能ゴミの80%は、分別収集されています。ゆえに、再生可能ゴミを埋立地に持っていくことはなく、その分、埋立地の使用可能期間は、かなり延長されることにもなります。
 この様に、市民全員が環境意識を持って再生可能ゴミを分け、環境都市クリチバつくりに参加しています。では、クリチバ市での代表的な3つの、ゴミについてのプログラムをここで紹介します。これらは、国連の環境部門からも、賞をもらっています。
 
1.ゴミでないゴミgomi1.jpgのサムネール画像
 このプログラムは、再生可能ゴミ仕分けへの参加を呼びかけたもので、いわゆる、ゴミのうちでも再生可能ゴミを仕分けすると、これはゴミではなく資源である、という環境教育プログラムです。1989年に最初にこの案を出した時、ブラジルのような教育程度が低いところで、そんなことは絶対無理だと、誰もが信じませんでした。しかし、当時の市長Jaime Lerner氏は「環境問題は教育程度とは何のかかわりもない。一市民としての責任である」として、次のような計画を立てた。
 1.大人はすでに生活習慣を持っている。小学校の生徒から始めよう。
 2.仕分けしなければいけない、というような押し付けのプログラムではなく、自主的に、ボランティアの精神で参加できるようにしよう。
 3.楽しいプログラムにして、毎日が良いことをしているという意識をもてるように計画。
 4.歌や、漫画、そしてキャラクター(葉っぱ家族)をつくって、楽しいプログラムにする。
 5.全市、全役所を挙げての大キャンペーンを展開する。gomi2.jpgのサムネール画像
初めは、小学校の先生方の意識改革、そして、研修を通して、教室でどのように生徒に伝えていくのかを、指導しました。生徒は、先生の言うことを率直に聞き入れやすく、再生することによりどんなに自然が保護されるのか、を伝えました。特に分かり易かったのは「60kgの古紙を再生することにより、成木一本を切らなくて、助けることができる」というシンプルな例で、子供達は、身近に再生ゴミの仕分けの必要性を感じるようになりました。(木は、いつになっても、子供の友であり、小鳥たちの保護者です)
 子供たちがなぜ分別するかをはっきり理解した結果、各家庭内では、子供たちが両親に教え、監視役にもなりました。市民全員が実際に体を使って仕分けするので、参加意識が強くなり、ひいては、クリチバ市民としての誇りにまで高まりました。
(アンケートでは、95%の市民が「クリチバを愛する、なぜなら、環境都市だから」と答えています)
 
 
2.緑の交換gomi3.jpg
 先に述べた様に、再生可能ゴミの分別は、クリチバ市民としての環境的責任である。ということで、全市民が参加することを望みましたが、やはり、市内の低所得者家族の多い地域については、分別量がかなり低く、意識が低いことが、調査で分かりました。
 そこで、住民たちに、ゴミの中でも再生可能ゴミは資源として価値があるということを理解しやすくするために、再生可能ゴミと食料を交換、ゴミに対しての意識を変えるよう図りました。
 
3.ゴミ買いプログラム
 集団不法侵入者によってつくられたファベーラ(スラム)では、土地条件も悪く、道路がない等の問題で、ゴミ収集トラックが入gomi41.JPGれず、ゴミが住居近くにたまって悪環境をつくり、幼児死亡率が 異常に高くなりました。そこで、市は、ゴミを買いましょうと住民たちに呼びかけ、ゴミをトラックが入れるところまで持って来たら、野菜・果物で支払いますというプログラムを実行しました。即ち住民がゴミ収集の仕事をしたと受け止め、清掃業者がその仕事について住民、特に子供や女性が一番必要としている食料で払うという仕組みにしたのです。その食料は、中央青物市場での売れ残りや近郊中,小農家からの過剰生産物を割安で買った物です。このように、住民にゴミのない生活を経験させ、環境的に正しい生活が経済的にもプラスになることを経験させたのです。

 

プロフィール

中村矗(なかむら・ひとし) : ブラジル・クリチバ市 元環境局長

1970年農業移住者として、両親の反対を押し切って、ブラジルへ渡る。その後、クリチバ市長だったジャイメ・レルネル氏に認められ、1989年にクリチバ市環境局長に、1995年には、パラナ州環境局長に抜擢され、その間、ジャイメ氏と人間都市クリチバの都市づくりに参加、様々なプロジェクトを発表し、クリチバ市を環境都市として世界的に有名にする。

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