アラスカに暮らす

ガイドの重責 肝に銘じ 〜アラスカに暮らす(98)〜

2013年03月25日

アラスカに暮らす(98)

 アラスカで暮らして10年。いつしか私は、アラスカ北極圏を専門、かつ正式に扱うただ1人の日本人ガイドになっていた。だが、こんな辺境でも、不愉快な現実と向き合わざるを得ないこともある。

 「不法ガイドをしている日本人は君のところか」

 その電話を、国のある機関から受けたときほど、一日本人として悔しく、やるせない思いをしたことはない。誇りと恥を忘れた一握りの心ない日本人が、アラスカで不法労働をしているのだ。

 彼らは米国の就労ビザ、ビジネスライセンス、公園や保護区などを管轄する国や州へのガイド登録、ビジネス保険などの一切を無視して、レンタカーに人を乗せるなど、いっぱしのガイド気取りである。他国の法を犯しながら、何も知らないお客を欺き、現地の人に迷惑を掛けていることなど、まるでお構いなしだ。

 中国・万里の長城での凍死、エジプトでの気球墜落など、日本人旅行者が海外で事故に遭うニュースを目にするたび、自問自答を繰り返してきた。ガイドとは看板を掲げさえすれば、すぐにできるような、そんな陳腐な仕事ではないはずだ。定められたルールを守り、臆病なほど安全に気を配ることで、初めてゲストにありったけの夢を見てもらえる仕事だ、ということを忘れずにいたい。

 この連載に関わってから、二夏と三冬を過ごした。その間、森を開墾し、家を造り、暮らしを築いてきた。未知の土地へも旅をし、出会いと発見もあった。この2年と3カ月の長きにわたり、応援してくださった読者の皆さま、本当にありがとうございました。

 それでは、いつかまた、旅の空の下でめぐり合うその日まで、どうぞお元気で。

3月17日未明、この連載の最終回にふさわしい激しいオーロラ爆発が、上空で繰り広げられた=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で3月17日未明、この連載の最終回にふさわしい激しいオーロラ爆発が、上空で繰り広げられた=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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