アラスカに暮らす

快適! あったかトイレ 〜アラスカに暮らす(89)〜

2013年01月21日

アラスカに暮らす(89)

 「こんなところで暖かく清潔なトイレが使えるなんて、驚きました」

 この冬、オーロラ観測小屋を訪ねてくださる方々から、こんな声をたくさんいただく。観測小屋に隣接したトイレをと、去年の夏からのんびり造り始め、完成したのが年末。入り口方向から見ると、水洗設備のないところではごく一般的なアウトハウスと呼ばれるものと変わりはない。

 ところで、見かけるアウトハウスのほとんどが、用を足せればそれでよしという、暗く狭い掘っ立て小屋であることに、かねて疑問を抱いていた。

 考えてみれば、食物が「口」という始発駅を発(た)ち、食道、胃、小腸、大腸、直腸を経た旅路の果てにひねり出される終着駅こそトイレではないか。

 始発駅では、花道のようなテーブルクロスなどに飾られ、お茶などの温かい伴侶を得、鏡のような輝きを放つ食器たちや、時にはにぎやかな会話という楽隊も参列し、うやうやしく見送られる。にもかかわらず、たどり着くのは暗い穴の底で、おまけに臭いなどとののしられるのでは、食物とてはなはだ遺憾であろう。

 そんな自問自答をこのトイレ造りに大いに反映させた。内装はオーロラ観測小屋と同じ天然木の化粧材を用い、デザインを統一。採光のためと、オーロラや野鳥観察も楽しめるよう二面に窓を設け、暖房設備も備えた。

 トイレ本体は赤杉のチップを用いたおがくず式だ。赤杉のチップはペットのそれにも使われているくらいで、消臭効果は抜群だし、その香りがすがすがしい。

 「目を閉じていると森林浴をしている気分ですね」

 「本でも読んで長居したくなりました」

 来客者の皆さんからのなんともうれしいほめ言葉である。

右が、おがくず式トイレの本体。手前におがくず箱、その後ろに紙専用ごみ箱、左に暖房装置。照明はろうそくを使用=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で右が、おがくず式トイレの本体。手前におがくず箱、その後ろに紙専用ごみ箱、左に暖房装置。照明はろうそくを使用=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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