アラスカに暮らす

厳寒期のシャワー事情 〜アラスカに暮らす(85)〜

2012年12月03日

アラスカに暮らす(85)

 お父さんは山へまき集めに、お母さんは街に洗濯に−。というと日本の昔話のようだが、アラスカの森の暮らしでは、そんなことの繰り返しが日常ともいえる。

 洗濯もそうだが、厳寒期はそうやすやすと外で体を洗うわけにもいかないので、シャワーもおのずと街へ浴びに行く機会が増える。シャワーが利用できるのは、街道沿いのドライブインや街の屋内プールなどで、料金は日本円で260〜400円程度。シャワーだけでと思うと、いささか高い感じもするが、北極圏では800円することを考えればうなずける。

 ところでシャワーの数が充実しているのと、値段の安さが手伝って普段はプールを利用することが多くなる。すると同じ時間帯によく見かける顔なじみもできる。

 「やあ君かぁ、外は相変わらず寒いね」

 「まったくですね、車のエンジンをかけるのにも一苦労ですよ」

 シャワーを浴びながら、顔なじみのおとっつぁんから声を掛けられたりもする。

 「底冷えの朝はな、エンジンの真下に熱い炭をたんまり入れたフライパンを置いて、暖めてからかけるといい」

 「昔の方法ですね」

 するとおとっつぁんは「なぁに、郊外暮らしのおいらは今でもそうしてるさ。もっとも時間はかかるがね」。たわわに肥えたおなかを揺らしながら、少々自慢げだ。が、その語り口に嫌みがないのがいい。それは、昔気質(かたぎ)な生活様式を今も実践しているという自負から、自然ににじみ出るからなのだろう。

 更衣室の壁に備え付けのドライヤーで、髪を十分乾かして表に出た。氷点下40度にもなる寒さでこれを怠ると、水っ気をたっぷり含んだ洗い髪は、バキバキと音を立てそうな勢いで、たちまちのうちに凍ってしまうのだ。

真っ暗な街道沿いにあるシャワー5ドル(約400円)の看板。夏はオートキャンプ場だが、冬はシャワーと洗濯のみ利用できる=米国アラスカ州フェアバンクス郊外で真っ暗な街道沿いにあるシャワー5ドル(約400円)の看板。夏はオートキャンプ場だが、冬はシャワーと洗濯のみ利用できる=米国アラスカ州フェアバンクス郊外で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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