アラスカに暮らす

最果ての島無人の住宅 〜アラスカに暮らす(72)〜

2012年08月13日

アラスカに暮らす(72)

 アンカレジを飛び立った機内には、200余りの座席の1割にも満たない人影が、ぽつぽつとあった。機は偏西風に逆らい、西へと飛ぶ。時折、雲海の上にのぞく雪をかぶった白い頂が見える。

 やがて雲が途切れると、眼下に広がる大海原に大小の島影が浮かび上がってきた。アラスカ半島から西へはるか2000キロ、チェーンのように島々が連なるアリューシャン列島だ。頂上付近がおわんのようにくぼんでいるのや、その中にカルデラ湖を持った島もある。この列島が、環太平洋火山帯の火山活動によって形成されたことに気付く。

 2時間余りたつと機は徐々に高度を下げ、翼を一方に大きく傾けた。視界に迫る島は草の緑と万年雪の白、そして岩塊の黒褐色と茶褐色のみで彩られた印象だ。岬のたもとでたわむれるカリブーを目で追っていると、機はツンドラの中の滑走路へと滑り込んだ。

 着いた所は、人の住む集落としてはアラスカ最南端、同時に、米国最西端のそれでもあるエイダック島。空港から宿に電話を入れようとしたが、公衆電話は壊れていた。

 困っていると、いいタイミングで空港に来ていた宿のおかみさんに声を掛けられた。「マキエイさんですか。とてもラッキーですね。こんな快晴の日は、めったにありませんから」。ここが強風と濃霧の島と予備知識で知っていたので、その言葉はお世辞ではないのだろう。

 無事宿に着き、一息つくと散歩に出た。夕刻のまばゆい日に照らされて、島は穏やかな様相だった。集落を見下ろせる海岸沿いの岩山に登った。見渡すと数100戸規模の統一規格の住宅群がニュータウンのように広がっていた。そのほとんどに人けがなく、明かりのともっていないことが気になった。

最果ての島の、ほとんど無人の住宅街は、それだけで十分な違和感を醸し出していた=米国アラスカ州アリューシャン列島のエイダック島で最果ての島の、ほとんど無人の住宅街は、それだけで十分な違和感を醸し出していた=米国アラスカ州アリューシャン列島のエイダック島で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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