アラスカに暮らす

堆肥生む無臭トイレ 〜アラスカに暮らす(67)〜

2012年07月02日

アラスカに暮らす(67)

 オーロラ観測キャビンの隣に、新たにトイレ小屋を建てている。当初は、地面を掘って、「アウトハウス」、そう、一般的なボッチャン式トイレにしようと計画したが、そこはコンクリートのようにカチカチな永久凍土。つるはしでもまるで歯が立たないと分かり、母屋にも採用した「おがくず式トイレ」に計画を変更した。

 便器に相当する部分は木箱を作り、上ぶたが開くようにした。便座の部分は上ぶたを丸くくりぬき、そこに市販の便座を取り付ける。木箱の中には約20リットルのバケツを置き、バケツにポリ袋を入れたら準備完了。あとは、用を足すたびに一握り分のおがくずを振りかける。おがくずは、経験的にペット用などの赤杉製のものがいい。消臭効果は絶対で無臭なのは驚きだ。

 ところで、現場は森に面しているので、風がないと蚊がどっとわいてくる。蚊は、どこにでもいて、本家のライチョウを差し置いて「アラスカの州鳥」とのニックネームもあるくらいだ。ツンドラでは特に多く、ブンブンと乱舞する中で手をたたいて両手を広げると、一度に20匹ぐらいがつぶれていることも珍しくない。

 おがくず式トイレのポリ袋の中身は、屋外の日当たり良好な場所で、適度な温度の中、かき混ぜると、堆肥にもなるという。この種の話になると、戦中、戦後と、ふん尿再利用の研究に血道を上げた中村浩博士の「くそ馬鹿」「ふんにょう博士一代記」などの著作を思い出す。

 宇宙開発幕開けの時代、ふん尿問題が重要課題として浮上。博士は、米航空宇宙局(NASA)ばかりか、旧ソ連からも歓待を受けたという。排せつ物を再び食物生産に役立てる可能性を秘めた簡素なこのトイレに出合っていたら、どんな感想を述べただろう。

トイレ小屋造りの現場で、人に寄ってくる蚊を追って飛んでくるトンボを息子が捕まえた=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅でトイレ小屋造りの現場で、人に寄ってくる蚊を追って飛んでくるトンボを息子が捕まえた=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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