アラスカに暮らす

土掘り 道を造ったぞ 〜アラスカに暮らす(61)〜

2012年05月14日

アラスカに暮らす(61)

 わが家の森に道を造ったのは2年前の夏のこと。その道は幅2.5メートルで母屋の西側からシラカバの森を抜け、50メートル先のトウヒの森まで続いている。

 スコップと一輪車を使い、完成まで要した期間は延べ5週間。「ブルドーザーなら1日でできるのに、もの好きだなあ」。現場を見に来た友人に笑われたが、人力でこなすとどのくらいの労力が必要なのかを自分の腕と足で確かめてみたかった。

 「こりゃあ、思っていたより大変そうだぞ」。成果が大きく表れない当初は、いささか弱気になって土を掘っていた。そもそも2週間もあればできるだろうと高をくくっていたのだ。繰り返し一輪車を土で満杯にし、その土を森にまいて踏み固めながら、毎日少しずつ道は延びていった。

 10日もたつと、1日の平均ペースが分かってきて、あとどのくらいかかるのかが見えてきた。漠然と考えていた期間の倍はかかりそうだった。「パパ、ぼくにもスコップを貸してよ」。時折、息子が手伝ってくれる。が、手にしていたスコップがいつの間にかミニカーに代わっていたりもする。

 春先にだけ小川がちょろちょろと流れるところには、車も渡れるようにと、丈夫な角材で組んだ長さ4メートルの橋を造って、道は一応完成した。昨年、母屋から100メートル離れた場所にオーロラ観測用の山小屋を建てることができたのは、この道を使って資材運びが容易になったからだ。

 「わーい!」。秋にシラカバの落ち葉が降り積もった、できたばかりの黄色い道を駆ける息子の姿を見つけた。一緒に汗をかいたことを、いつか大人になった彼は思い出すことがあるだろうか。そんなことをふと思った。

スコップと一輪車で道造りに挑んだ。もちろん車の通行も可=米アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅でスコップと一輪車で道造りに挑んだ。もちろん車の通行も可=米アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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