アラスカに暮らす

氷の彫刻世界選手権 〜アラスカに暮らす(56)〜

2012年03月26日

アラスカに暮らす(56)

■細部まで彫り込まれ

 ゴゴォォォッー。キャッホゥ! フェアバンクス市内の一角、ジョージ・オーナー氷の彫刻公園。その広場に作られた高さ約3メートル、長さ30メートルほどの氷のすべり台を勢いよくすべるそりの音と、子どもたちの歓声が雪の上にこだまする。

 夜のとばりが下りると、氷に埋め込まれた青、緑、赤のライトがすべり台を光るレールのように宵闇に浮かび上がらせた。

 毎年3月、フェアバンクスでは「氷の彫刻世界選手権大会」が開かれる。この大会、腕に覚えのある氷の彫刻家たちが世界中から集まり、その技と芸術性を競い合う。

 1990年、わずか8組のチームで開催されたのが正式な始まりとされる。以来、13回目になる今年は、1つの氷の塊から作るシングルブロックの部と、複数の氷の塊を使うマルチブロックの部を合わせ、59組の参加を数えるまでになった。

 参加者は米国のほか、中国、ロシア、カナダ、ポルトガル、スペイン、ドイツ、英国、フィリピンそして日本からと多彩だ。「極北のダイヤモンド」に例えられ、透明度の高い地元の天然氷から生まれた彫刻は、色とりどりにライトアップされ、夕闇の中でひときわ映える。

 飛翔(ひしょう)するタカは羽根の1枚1枚まで、インディアンは身に着ける装束の細部まで彫り込まれている。先住民らしき人がこぐカヌーには、今にもかぶりそうな波しぶきが躍動的な動きを与えられている。

 果たして、シングルブロックの部、マルチブロックの部いずれも1位は日本人、中村順一さんが参加した作品だった。

 特にマルチブロック部門では、襲いかかろうとするヒョウから身を守る体勢のヤマアラシが背中に突き立てる、軽く100本はありそうな細いとげがそのしま模様まで1本1本精密に再現され、これほどの細工が氷でできるものかと驚かされた。

 中村さんは大会で常に上位に入賞するなじみの顔。来場者たちは、ミスター・ナカムラの作品の前で長々と足を止め、感嘆の息をのみながら、春の訪れとともにやがて溶けゆく芸術にカメラのレンズを向けていた。

会場内に作られた氷のすべり台でそり遊びをする若者=米国アラスカ州フェアバンクスのジョージ・オーナー氷の彫刻公園で会場内に作られた氷のすべり台でそり遊びをする若者=米国アラスカ州フェアバンクスのジョージ・オーナー氷の彫刻公園で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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