アラスカに暮らす

真冬のアイスフィッシング 〜アラスカに暮らす(54)〜

2012年03月12日

アラスカに暮らす(54)

■鮮やかな銀鱗に歓声

 「こんにちは! 明日、アイスフィッシングに連れていってくれませんか」。めくるめくようなオーロラに出合った数日後、アラスカ鉄道の中で知り合った4人組の台湾娘から電話があった。

 翌日、彼女たちを車に乗せ、フェアバンクス郊外の湖へ行った。「この坂を下りると凍った湖の上です」「車で下りても大丈夫?」「もちろん!」。そこが氷の上だとはにわかに信じ難いらしく、足元を気にしながら車から降りる彼女たちは、辺りを見渡して少し不安そうだ。

 小型エンジンの付いたドリルを始動し、氷に穴を4つ開ける。これはなかなかの重労働だ。初冬の10月に凍り始める湖は、12月になると車が載ってもびくともしないほどの厚さに成長する。既に厚さは1.3メートル。穴の上にアイスフィッシング用のテントを立て、暖房用のストーブを入れた。5人でその中に入り、餌のエビを針先に付けると早速、糸を穴に垂れた。

 しばらく待ったが当たりはなく、さお先はぴくりとも動かない。今冬は釣果があまりよくないので少し不安になってきたところだった。「きゃあっ!」。雑談をしながらお茶を飲んでいると突然一人が大声を上げ、さおを一気に持ち上げた。

 瞬間、水しぶきとともに氷の上に鮮やかな赤紫色の銀鱗(ぎんりん)が躍る。「釣れた! 釣れた!」。30センチほどのニジマスである。それから、彼女たちは立て続けに同サイズのニジマス2匹と、黄銅色にオレンジ色の斑点が美しい北極イワナを1匹釣り上げた。

 釣った魚の頭とワタをナイフで落とした。適当な大きさに切り、空揚げ粉にまぶして熱した油の中に投じた。「すぐに料理してくれるなんて最高ね! おいしそう!」。娘たちは待ちきれない様子で、油の中でカリカリに揚がっていく魚の切り身を見つめていた。

30センチの北極イワナを釣って喜ぶ台湾からの旅行客=米国アラスカ州フェアバンクス郊外のチナ湖で30センチの北極イワナを釣って喜ぶ台湾からの旅行客=米国アラスカ州フェアバンクス郊外のチナ湖で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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