アラスカに暮らす

不思議なオーロラ 〜アラスカに暮らす(53)〜

2012年03月05日

アラスカに暮らす(53)

■赤色まじる巨大な姿

 アラスカ鉄道でアンカレジからフェアバンクスに戻った1月21日。家に着くと、カメラの準備をしてオーロラ出現に備えた。

 その夜は横殴りの風が吹き荒れ、森の木々がおとぎ話の世界から飛び出した化け物たちのように左右前後に大きく揺れた。天気概況は、北極圏では地吹雪を伴う烈風が影響し、体感温度が氷点下60度以下、視界はほぼゼロと伝えていた。

 午後11時ごろ、オーロラ観測キャビンの傍らで空を眺めていて、かすかなオーロラを見つけた。それは弱いながらも帯状の明滅を繰り返している。

 試しに撮影すると、普段は見えない赤色が鮮やかにカメラのモニターに浮かび上がった。幾度となくオーロラを撮影してきたが、赤色が普通に写ることは極めて珍しい。今夜は何かが起きそうだ。そう直感した。

 「オーロラへの招待」(赤祖父俊一著)によると、太陽系でオーロラが出現するのは地球だけではないそうだ。磁場と大気を持つ惑星にオーロラは現れるらしい。その条件を満たした惑星は地球のほかに、木星、土星、海王星など。

 地上で一般的に見られる緑白色や、時々、写真に写る暗赤色のオーロラは酸素原子が作り出すと説明されている。この地球が潤沢な酸素に恵まれた命育む星であることをオーロラの色が教えてくれてもいるのだ。

 日付が変わるころから、普段はほとんどオーロラが現れない南の空に変化が現れ始めた。そして、ある瞬間から、大きなレールにつるされた透き通った光の布のようなオーロラが、南北を分かつように東西に広がった。一部、肉眼でも赤い色が確認できる。

 「予想どおり、今夜のオーロラは特別なものだ」と確信した。深夜2時ごろ、天頂から大地を包み込むような幾筋もの光線が降りだした。さながら巨大な光る鳥かごが下りてくるかのようだ。

 そのかごのとりこになりながら、ただシャッターを切り続けた。やがて、吹きすさぶ風だけを残して、その不思議なオーロラは、星々を包む闇の中に溶けていった。

1月21日夜、姿、色を変化させながら降り注ぐオーロラ。近年では極めて大きなオーロラ活動と伝えられた=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で1月21日夜、姿、色を変化させながら降り注ぐオーロラ。近年では極めて大きなオーロラ活動と伝えられた=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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