アラスカに暮らす

鉄道の旅(上)〜アンカレジ出発 〜アラスカに暮らす(51)〜

2012年02月20日

アラスカに暮らす(51)

■雪に歓声の旅人 新鮮

 久しぶりに米国最北の居酒屋を訪ねた翌朝7時半、アラスカ鉄道アンカレジ駅で乗車手続きをしていた。

 冬季にアンカレジとフェアバンクスを結ぶ旅客便は、土曜日のアンカレジ発フェアバンクス行きと、日曜日のフェアバンクス発アンカレジ行きの週1往復のみ。片道約12時間の長旅だ。

 この時期はほとんどお客がいないと聞いていたが、駅舎の中は多くの人でにぎわっていた。見渡すところ日本人は私1人のようだ。窓の外では、2両の気動車が客車4両、食堂車、荷物車各1両を引いて待機していた。

 8時半に改札口が開くと、客車に進んで指定席の番号を見つけ、網棚に荷物を上げた。車内はほぼ満席。どうしたことか、周りはアジア系の女性たちばかりだ。

 「どちらからですか?」。隣に座ったタミーと名乗る女性に尋ねた。「台湾からよ。旧正月の休暇中なの」。ふむふむ。「女性ばかりですが?」「いい質問ね。ある程度余裕がある独身女性たちは自分のためにお金と時間を使うの」

 なるほど、案外日本と変わらないかもなあと納得。アンカレジを出て1時間余り、左側の車窓に、海氷に覆われたニック入り江が見えてきた。列車は入り江を大きく左に巻きながら、ゴトゴトゴトゴトと走る。

 雲一つない碧(あお)く澄み渡った明け空の下、1羽のハクトウワシが客車のすぐ上を滑空しながら横切っていく。「本物の雪は生まれて初めて!とてもきれい」。瞳をきらきら輝かせてタミーがはしゃいでいる。そういえば、皆、車窓に流れる景色を熱心に撮影している。雪景色に強烈な憧れを抱いている人々の姿が新鮮に映った。

 ぐぅううっ。思い出したようにおなかが鳴った。食堂車へ行き、辛口ソーセージにいり卵やビスケットのようなパン、そこに塩味のホワイトソースがかかったメニューを頼む。「コーヒー?」と聞かれ、思わず「ビール!」と答えてしまった。

 入り江を見下ろし、びょうぶのように立ちはだかるチュガッチ山脈の峻険(しゅんけん)な峰々の頂を朝日が鮮やかな赤紫色に染め始めていた。

土曜日の夜明け前、朝8時半。改札が開くと同時に客車に乗り込む旅人たち=米国・アラスカ鉄道のアンカレジ駅で土曜日の夜明け前、朝8時半。改札が開くと同時に客車に乗り込む旅人たち=米国・アラスカ鉄道のアンカレジ駅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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