アラスカに暮らす

米国最北の日本居酒屋へ 〜アラスカに暮らす(50)〜

2012年02月06日

アラスカに暮らす(50)

■演歌耳にほろ酔い気分

 「おやおや、お久しぶりですね。覚えてますよ」。フェアバンクス空港から電話を入れると、おかみさんの懐かしい声が受話器から聞こえてきた。「これから参ります。7時ごろ、席を1つ空けておいてください」

 その日の午後、突然アンカレジへ行こうと決めた。久しぶりに居酒屋で酒を飲みたい気分だったのだ。フェアバンクスから約1時間のフライトで夕方6時半にアンカレジに着くと、タクシーを拾い宿へ。チェックインを済ませ、街灯やネオンに照らされた雪道を歩いて店に向かった。

 アラスカ最大の街、アンカレジには米国最北の日本居酒屋がある。店の名は「やまやシーフード」。見覚えのあるたたずまいの店構えを見つけると、ドアを開けてのれんをくぐった。「こんにちは」。5年ぶりに再会したおかみさんと、おでこにねじり鉢巻きをしただんなさんが笑顔で迎えてくれた。

 お気に入りのカウンター席に座った。早速、マグロ、ホタテ、タコ、サーモンなどの刺し身の盛り合わせを注文し、ビールで喉を潤した。店内に流れる純和風演歌を耳にグラスを傾ければ、気分は日本の居酒屋そのものだ。が、週末なのに日本人客は私1人。ほかの席は全て現地に住む日本人以外の人々で埋まっていた。

 ビールを2本空にして一息ついたところで、キングサーモンのヒレ酒を頼んだ。こんがり焦がしたヒレからべっ甲色のうま味が、かん酒の中にじんわりと染み出している。おちょこに注いで一口すすると、ヒレの香ばしい風味が日本酒の香りと混ざり合ってふわっと広がり、何とも味わい深い。この店で1番好きな銀ダラのかす漬け、それに焼き鳥、ギョーザ、塩サバなどをつつきながら、ヒレ酒を4合ばかり。

 お品書きに、以前なかったメニューを見つけた。「『ラーメンをぜひ』という声が多くてね。それで始めたんですよ」。福岡県出身のだんなさんが作る本格豚骨ラーメンを締めに、残りの酒をちびりとやった。

 舌と胃袋で人を満足させる仕事についてあらためて敬意を感じ、満たされたほろ酔い気分で、来た道を宿へと戻った。

「はい、お待ちどお!」。特製のラーメンは本格派。豚骨のコクが実においしかった=米国アラスカ州アンカレジで「はい、お待ちどお!」。特製のラーメンは本格派。豚骨のコクが実においしかった=米国アラスカ州アンカレジで

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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