アラスカに暮らす

車も凍る季節 〜アラスカに暮らす(48)〜

2012年01月23日

アラスカに暮らす(48)

■エンジン始動大わらわ

 昨年末から2週間続いた氷点下30度の寒波の影響で、買い物や、毎朝夕、子供の送迎に使っている一番の働き手の車が動かなくなってしまった。

 アラスカでは、厳しい寒さの中でも車のエンジンがかかるように、全ての車が寒冷地仕様にカスタマイズされている。最初に目に付くのは、フロントグリルからおもむろに飛び出したコンセントだ。プラグインと呼ばれ、これを屋内から引いたコードと接続し、寒さに弱いバッテリーなどに備えられたヒーターを温める。

 冬季は通常、エンジンをかける2〜3時間前にはプラグインを始めなくてはいけない。わが家には恒久的な電気設備がないため、発電機を作動させることでプラグインする。でも、子供を学校に送迎する朝の少なくとも2時間前、つまり早朝5時に毎日起きるのは体力的につらい。

 そこで先日、オートスターターという装置を導入した。内蔵の温度センサーと連動し、外気が氷点下15度以下になると、2時間半おきに、あらかじめセットしておいた時間だけエンジンを自動的に動かしてくれるという便利なものだ。

 この装置のおかげでどんなに冷えた夜でもエンジンが凍りつくことはないはずと思いきや、厳しい寒さは期待をたやすく裏切り、エンジンがかからなくなってしまった。

 今でも時折聞く話だが、昔は、熱々の炭でいっぱいのフライパンを車のエンジンルームの下に置き、さらにボンネットに毛皮や毛布をかぶせて何時間もかけて温めたというから、ずいぶん楽になったはずなのだが。

 動かなくなった車を修理に出そうと、仕方なくレッカー車を呼んだ。運転席から降りてきたビリーと名乗る男性が慣れた手順で車を荷台に載せていく。「どう、忙しい?」「忙しいなんてもんじゃあないさ。特に寒い今の時期は、1日に18回も出動することだってあるんだ」

 さしずめ、商売大繁盛といったところか。ビリーはうれしそうに顔をほころばせると、座高の高い運転席にさっそうと飛び乗ったのだった。

レッカー会社を営むビリー。車の故障が多発する厳冬期は依頼の電話が鳴りやまない=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅でレッカー会社を営むビリー。車の故障が多発する厳冬期は依頼の電話が鳴りやまない=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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