アラスカに暮らす

クリスマスは厳かに 〜アラスカに暮らす(45)〜

2011年12月26日

アラスカに暮らす(45)

■往年の日本の新年に似て

 「ハッピークリスマス」−クリスマスの数日前、しきりにラジオからジョン・レノンの歌が流れていた。

 つい1カ月ほど前、1年で最も物が売れるという米国の祝日、サンクスギビングの商戦を終えたばかりの大型店舗の店内が、今度は赤や緑や金銀のきらびやかな色の商品や飾りで、クリスマスムード一色だった。

 アラスカといえども米国の一部。この国が飽くなき消費によって支えられているのだとまざまざと見せつけられ、毎年のことではあるけれども、訳もなく尻込みしてしまった。時々の“衣装”に着飾った街の風景に季節を知ることもできようが、ある意図のもとに演出された虚飾の裏に見え隠れするしらじらしさが透けてしまい、心からなじめないこともある。

 ともあれ、こちらのクリスマスは一昔前の日本の元旦のような感覚に近い。仕事や店は休みで、人々は家でのんびり過ごす。この時期、外で忘年会や新年会があるわけでもなく、新年も日常と変わらず、朝から普通に会社も店も始まるのが日本との違いだろう。

 ただ僕がどう感じようが、クリスマスは子供にとっては特別なイベントらしい。クリスマスツリー用の木は、息子と一緒に森から切り出した。

 この身を包む凍(い)てつく森の寂しさと静けさが冬という季節そのものの雰囲気ならば、街の喧騒(けんそう)から離れて、そこにただ身を浸しているのもいい。雪の間から、か細く伸びて、弓なりに頭を垂れている枯れ草にさえ心動かされるのは、誰にもこびず、踊らされず、背伸びもしないで、ただそこにある気高さに憧れを抱くからか。

 そうはいっても、過ぎゆく1年を数々の思い出とともに見送りながら、かすかな希望を抱き、厳かな気持ちで新しい年を迎えたいと思うのは、日本人も米国人も変わらない人の心だろう。

 新年も引き続き、アラスカでの暮らしを通じて感じ、体験するさまざまな事柄を取り上げていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします。

クリスマスツリー用に切り出したトウヒの木をそりで運ぶ息子=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅でクリスマスツリー用に切り出したトウヒの木をそりで運ぶ息子=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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