アラスカに暮らす

オーロラ観測キャビンを造る 〜アラスカに暮らす(44)〜

2011年12月19日

アラスカに暮らす(44)

■大変な作業にも喜び

 母屋から100メートルほど離れた森の一部を開墾し、今年の夏からオーロラ観測を主目的とした山小屋をこつこつと造り続けている。

 秋に完成のつもりが、季節外れの寒波の到来などで、とうとう年末までずれ込んでしまった。大工の友人に「冬に家を建てる人っているのかな」と尋ねたら「まずいないね。いや、ここにいたよ、物好きなやつが」と笑われてしまった。

 よくまあ、これだけの資材を運んだものだなと、つくづく思う。何しろ建築現場までは車が入れないので、梁(はり)などの長く重い材も全部人力でえんやこらと運んだのだ。

 建物は床の広さが約4.9メートル×7.3メートル。その三辺を囲むようにデッキを設けた。斜面に建つので高床式倉庫のように、建屋の床下から地面に向かって6本の柱が伸びている。断熱材、内壁、まきストーブを入れ、家としての体裁が整うまでいよいよ1週間ほど。

 この山小屋造りには、夏に数人の若者たちが入れ代わり参加した。その1人は、日本の大学を1年間休学し、アメリカ大陸横断自転車旅行の皮切りとして、わが家に2カ月滞在。その間に作業を手伝ってくれた。自己紹介の最後に「僕は何より三度の飯が大好きです」と書かれたメールから、正直な人柄を感じたことが彼を呼ぶきっかけとなった。

 20歳そこそこの青年たちと過ごした夏の日々は新鮮だった。若者特有の将来への漠然とした悩みと純粋な夢が交錯する彼らの言葉や表情に、同じ年ごろだった自分自身を映してみたりもした。

 共に汗を流し、たらふく飯を食べ、夜ごと酒を酌み交わす日々は実にすがすがしい体験でもあった。ユーコン川のカヌー一人旅を記した「ウーマンアローン」等の著作で知られる作家の広川まさきさんも彼らに交じって手伝いに来てくれた。

 原野を開き、自分で一から家を建てる。怖いもの知らずの素人芸と言われてしまえば、それまでかもしれないが、アラスカでは自ら家造りを楽しむ男たちも少なくない。この地がラスト・フロンティアと呼ばれるわけがそんなところにもあるのだろう。

新しく開墾した場所に建築中のオーロラ観測キャビン。完成まであと少し=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で新しく開墾した場所に建築中のオーロラ観測キャビン。完成まであと少し=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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