アラスカに暮らす

バッテリーシステムを導入 〜アラスカに暮らす(38)〜

2011年10月24日

アラスカに暮らす(38)

■騒音なく電気を得る

 電気が来ていない所で暮らし始めて、2年が過ぎた。

 先ごろ、発電機から直接電気を得るこれまでの方法をやめ、バッテリーシステムを導入した。車載用に似た6ボルトのバッテリーを直列に4個つなぎ、24ボルトにしたものをインバーターという機械を通して増幅。米国の標準である110ボルトを得るというものだ。

 インバーターは、発電機からの電力をバッテリーに充電する機能も備えている。電子レンジ用などの大容量を得ることはできないが、電球をともし、パソコンやテレビを使うには十分だ。

 フェアバンクスには「オフグリッド」、つまり電気の来ていない場所で重宝する用品の専門店「ABS」がある。店内は、わが家も使うプロパンガス式の冷蔵庫や大小のソーラーパネル、風力発電機、各種バッテリーから細かなプラグ、コード類、そしてインバーターなど、オフグリッドライフに欠かせない道具でいっぱいだ。

 私たちも、ここでバッテリーシステム一式を購入した。が、電気関係に明るくない私はそれらを買ったまま、しばらく部屋の隅に放置しておいた。すると、ちょうどタイミングよく日本から来ていた友人の大学教員原田鉱一郎さん、通称おとっつぁんが「電気のことなら、俺に任せろ」と、目が回りそうに複雑な配線や、インバーター、充電制御器の設定をやってくれた。

 準備が完了すると点灯式。インバーターのスイッチを押すと電球が光りだした。発電機のブーンという低いうなり声が全くない。無音で電気が得られるのは実に2年ぶりだ。

 その晩、20世紀前半に活躍したビオラの名手、ライオネル・ターティスの古い音源のCDを聴いた。アラスカのゴールドラッシュも終わりかけた70年以上前に録音されたものだ。

 今まで発電機の騒音でかき消されていた、針がごりごりとレコード盤をこする雑音のかなたから、ピアノの伴奏に乗って、ビオラの低い音が旋律を奏でだす。ノスタルジーという言葉では言い尽くせない雑音はどこか温かみを感じさせ、耳に心地よかった。

奥にバッテリー、左がインバーター。手にしているのは充電制御器=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で奥にバッテリー、左がインバーター。手にしているのは充電制御器=米国アラスカ州フェアバンクス郊外の自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

地球のいのち、つないでいこう

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ 記事全文へ バックナンバー一覧 記事全文へ 一覧 一覧 一覧 一覧 一覧 一覧