アラスカに暮らす

昆虫でにぎわう短い夏 〜アラスカに暮らす(30)〜

2011年08月22日

アラスカに暮らす(30)

■色とりどり 輝く“宝石”

 「パパ! アゲハを捕まえたよ」。息子が勢いよくログキャビン(丸太小屋)に駆け込んできた。

 アゲハチョウの仲間はアラスカにも生息している。羽を広げると幅は5、6センチ。わが家の周辺では比較的大きいチョウで、色は日本のキアゲハのような鮮やかな黄色地。いくつかの黒い筋が入っていて、オレンジと青の紋様もある。

 窓から見えるのはカップルだろうか。木漏れ日で緑が輝く森の中を、リズミカルにひらひらと舞う黄色い2羽のチョウは見ていて飽きない。

 アラスカにも四季があり、夏の内陸アラスカは想像以上に多くの昆虫でにぎわう。

 黒い体にくっきりとした白い斑点、クワックワッと独特の音を鳴らすカミキリムシ。上下左右、自由自在に飛び回りながら、蚊などを捕食するトンボ。それを知ってか、息子は捕まえたトンボに蚊やハエを与えては「ほら見て! 食べてる!」と興味津々だ。

 緑色のカメムシや、赤茶色のテントウムシもいる。枯れ葉のように羽の縁がギザギザしたタテハチョウは夏の盛りを過ぎるころになると、頻繁にやってくる。どれもこれも幼いころ、日本で慣れ親しんだなじみ深い種類の昆虫だ。

 3年ほど前だったか、北極圏の河原で、大量発生したバッタの群れに遭遇したことがあった。不思議なことに、数百匹はいると思われるバッタの多くが同じ方向を向いている。河原の小石に同化しているような灰褐色の軍団がじりじりと歩む様子から、まるで地面全体が動いているような奇妙な錯覚を覚えたものだ。

 今年は、母屋である未完成のログキャビンに手を入れながら、そこから100メートルほど離れた場所に、オーロラ観測用の新しいキャビンも建てている。

 「パパ、あそこ! またチョウが来たよ!」。作業場の傍らには虫捕り用の網が常に置いてあり、チョウやトンボが飛んでくると、一緒にいる息子は、それを片手にすっ跳んでいく。捕まえた虫は、虫かごなどに分けて入れられる。「これ、みーんな標本にするんだ」。並べられた昆虫たちは、夏の短い間だけに輝く宝石たちのように色とりどりだ。

アゲハチョウの仲間を捕まえてうれしそうな息子=米国アラスカ州フェアバンクス郊外でアゲハチョウの仲間を捕まえてうれしそうな息子=米国アラスカ州フェアバンクス郊外で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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