アラスカに暮らす

ゴールドラッシュ街道を行く 〜アラスカに暮らす(27)〜

2011年07月25日

アラスカに暮らす(27)

■カヌーで下る夢の跡

 家族と仲間たちで、北極圏を流れるミドルフォーク・コユクック川をカヌーで下った。

 この川は、ブルック山脈の南側から流れ、蛇行を繰り返しながら南進し、大河ユーコン川に注ぐ。100年ほど前のゴールドラッシュの時代には、一獲千金を夢見て、砂金を求める男たちが、馬でボートを引くなどして大挙遡上(そじょう)してきたことで名高い川だ。

 出発地点は川沿いのコールドフット。「冷たい足」という変わった名前の由来は、ある山師が足の寒さに耐え切れず、ここで引き返したからともいわれている。当時は栄華を誇った村も、今ではドライブインと宿が営まれる小さな集落だ。

 河原に出て、折りたたみ式カヌーを組み立てた。「パパ、僕にもやらせて」。アルミフレームをつなぐ作業に息子は興味津々。組みあがったカヌーを川岸近くに浮かべ、寝袋やテントが入った防水袋、直径20センチほどの筒状の食料保管コンテナなどを積み込んだ。熊から食料を守るこのコンテナは「ベアバレル」と呼ばれる。

 僕のこぐカヌーには前に家内、真ん中に息子、その後ろに僕。カヌーがゆらゆらと音もなく流れる。暖かい陽光を受けながら、心地よい揺れに誘われて息子はこくりこくりと居眠りを始めた。僕は仲間と箱入りワインを回し飲みし、時折パドルで水を切る。川岸に現れたアメリカ黒クマがカヌーに驚き、森の中へ駆けた。山岳地帯、渓谷など変化に富んだこの川の上流域は、ファミリーツーリングにもってこいだ。

 目的地、人口30人ほどのベツルス村に着いたのは3日目。ゴールドラッシュのころは今よりも下流にあり、外輪船も停泊して大変にぎわったという。金の換金所やバーを備えていた朽ちかけた木造ホテルが今も残る。

 村ではジニーおばあちゃんが到着を待っていてくれた。ジニーとは、もう10年以上も行き来する仲だ。いつもかわいらしく、穏やかなたたずまいのジニーは、自然と心を和ませてくれる。村の郵便局長を長年勤め上げ、70代を迎えたジニーと小さな息子が、夏草の上でたわむれる様子はどこかほほ笑ましかった。

かつて山師たちの夢と金を運んだ川をカヌーで行く=米国アラスカ州、北極圏のミドルフォーク・コユクック川でかつて山師たちの夢と金を運んだ川をカヌーで行く=米国アラスカ州、北極圏のミドルフォーク・コユクック川で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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