アラスカに暮らす

ガイドという生き方 〜アラスカに暮らす(22)〜

2011年06月06日

アラスカに暮らす(22)

■十分すぎる出会い 感謝

 「ネイチャーイメージ」という小さな会社を家族で営んでいる。主な仕事はガイドである。アラスカでは、原野行や動物観察、ハンティングなどで、民間の個人ガイドが活躍している。

 30歳で会社を辞め、アラスカ北極圏の川をカヤックで旅した。そのときに出会った同じ年齢の女性ガイド、アイオンの自信と誇りに満ちた青く輝く目を今でも思い出す。

 ガイドといっても、看板を出せば次の日から仕事が来るという簡単なものではない。ガイドはライフスタイルそのものであり、自己の好奇心と経験の積み重ねの上に成り立つ。その上で、ここが大切なのだが、アラスカ州が定めるさまざまな規約に関する煩雑な法的手続きをこなし、初めて一人前のプロガイドとして仕事ができる。

 私の基本姿勢は少人数制である。居酒屋に例えるなら、縄のれんに赤ちょうちんのスタイルだ。ありがたいことに、この赤ちょうちんにはリピーターや口コミも少なくない。夏は1週間程度のキャラバンを組むことも多く、互いの程よい距離感をいち早くつくり出すことが要求される。

 現場で大切なのはリラックスした空間をつくること、そして一歩引く姿勢だ。「動物や風景にも感動しましたが、こんなに自由なツアーは始めてです」。お客さんのそんな言葉が素直にうれしい。

 私が大切にしている「ちいさな島」(ゴールデン・マクドナルド作、谷川俊太郎訳)という絵本がある。

 四季の豊かなちいさな島にある日、1匹の子猫が小船に乗ってやってくる。ちいさなところだという子猫に、海の下では、全ての地面とつながっていると想像してごらん、と魚が告げる。そして物語はこう結ぶ。

 ――ちいさな島でいることは すばらしい。世界につながりながら じぶんの世界をもち かがやくあおい海に かこまれて――

 異郷の地で、私の存在はちいさな島そのものだ。いや、どこに暮らそうが、人はちいさな島なのかもしれない。が、この仕事を通じ、十分すぎるほどの出会いに恵まれている。そのことに、感謝を忘れてはいけないと教えられる。

普段からひとりで秘境を歩き、お気に入りの場所を探す=米国アラスカ州、北極圏ブルックス山脈で普段からひとりで秘境を歩き、お気に入りの場所を探す=米国アラスカ州、北極圏ブルックス山脈で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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