アラスカに暮らす

夏の極北に集まる渡り鳥たち 〜アラスカに暮らす(21)〜

2011年05月30日

アラスカに暮らす(21)

■カラフルに季節彩る

 5月中旬。ツクシが地面から顔を出し、シラカバの枝からは透き通るような緑の若葉が萌(も)えだす季節。

 「パパ! 初めて見た鳥がいたよ」。外で遊んでいた息子が駆けてきた。地面に落ちているトウヒの実をついばんでいたのは鮮やかな紅色をしたギンザンマシコの仲間だ。

 トウヒの木のてっぺんでは、おなかがオレンジ色のコマツグミがヒュルリ、ヒュルロ、ヒュルリと、よく響く声で歌を奏でる。頭頂部が赤いベニヒワや頭央が黄色のキガシラシトド、くちばしがピンク色のユキヒメドリは地面に落ちているシラカバの種などをしきりについばむ。

 キヅタアメリカムシクイは喉やおなかの両側、尾の付け根の黄色がとても鮮やかだ。巣作りの場所を探しているのか、ツバメたちが家の回りを飛び回る。

 5月下旬、アラスカ北極圏ブルックス山脈の峠を越え、広大なツンドラ地帯に出ると、多くの渡り鳥たちと出合えた。

 湖面では、尾がピンと上に向いたオナガガモや、白いお面をつけたようなコオリガモ、頭の毛が後ろに跳ねて、目とくちばしが赤いウミアイサ、オレンジに黄色と白、黒という派手なくちばしを持つアラナミキンクロ、そしてコハクチョウなどが戯れる。

 水辺では、黒い首輪をしたようなミズカキチドリやたくさんのシギの仲間が歩き回っている。ほおから喉が白いシジュウカラガンや、灰色の体に頭が赤いカナダヅルの姿も見える。

 突然、ギッという甲高い声とともに何者かが急降下してきたので思わずのけぞった。くちばしと脚が赤く、真っ黒な頭と真っ白な体が青空に映えるキョクアジサシだ。うっかり巣に近づいてしまったらしい。この鳥は、最も長い距離を渡る鳥としても知られる。南半球からはるばるやって来たのだ。

 よく晴れた日に、ツンドラを埋め尽くす数百羽の真っ白なハクガンが一斉に飛び立つ姿は、夏の到来そのものを見ているようで大変気持ちがいい。北極圏北東部に飛来する、これら200種類ともいわれる渡り鳥たちは、3カ月ほどでまた南へと去っていく。極北の夏は、渡り鳥の季節ともいえるだろう。

初夏のツンドラから舞い上がったハクガンとマガン=米国アラスカ州北極圏、ノーススロープで初夏のツンドラから舞い上がったハクガンとマガン=米国アラスカ州北極圏、ノーススロープで

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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